『イスラエル・エジプト双方から出た危険な兆候』

2012年5月 2日

 エジプトはいま大統領選挙を前に、激しい選挙戦が展開されている。そのなかで、ムスリム同胞団から飛び出して立候補した、アブドルモナイム・アブルフット-フ氏が善戦し、下馬評ではトップを走っているようだ。

彼に続く支持を得ていると言われているのは、元エジプト外相、アラブ連盟事務総長を務めたアムル・ムーサ氏だ。彼は外相職を務めていたことから、エジプトと世界との関わりに詳しい。なかでもイスラエルとの関わりについてはエ、ジプト国民の強い関心を呼ぶ所であるだろう。

そのアムル・ムーサ氏が最近、きわめて重要な発言をしている。それは『エジプトとイスラエルの間で交わされたキャンプ・デービッド合意は、意味をなさなくなった。』というものだ。

彼に言わせると、キャンプ・デービッド合意はエジプトとイスラエルとの和平合意だけではなく、もう一つの合意事項があった。それはパレスチナ国家の樹立だった。しかし、イスラエルは完全にパレスチナに関する合意を、無視し続けている。したがって、エジプトとイスラエルが交わしたキャンプ・デービッド合意は、意味をなさなくなったというのだ。

もう一つの危険な発言は、イスラエルの元国防相であるベンジャミン・ベンエリエゼル氏が語ったものだ。彼は『イスラエルはエジプトとの紛争に、準備しなければならない。』と語っているのだ。

これはシナイ半島で産出されるガスの、エジプトからのイスラエルの輸入が、ままならなくなったことに、関連して語っているのもだ。

エジプトがイスラエルに対して、シナイ半島産出のガスを、輸出することに合意したのは2005年であり、実際にガスがイスラエルに送られるようになったのは20085月からだ。

そのガスの輸入については、パイプ・ラインの敷設があり、莫大な費用がかかっているのだ。それにもかかわらず、エジプトは最近その修復と、ガスの安全な輸出に、努力していないというのだ。

イスラエルのネタニヤフ首相は、あくまでもイスラエルとエジプトの企業間の問題であり、何ら政治的意味合いを持っていないというが、ベンジャミン・ベンエリエゼル氏は政治的な背景があると指摘している。

彼に言わせれば、アラブ諸国はイスラエル国民が考えるよりも宗教的であり、イスラム的だ。そして反イスラエルの感情も極めて強い。しかも、世界中の国々がイスラエルに対して、極めて冷たい対応を採るようになっている。

エジプトの選挙をめぐっては、ムスリム同胞団のメンバーが大統領になるのか否かが、いまだに明確になっていない。イスラエルとのガス取引に調印をしたエジプト野ファハミー氏やムバーラクの子息ガマール氏は、いま裁判にかけられている。最近のエジプトの権力者集団(軍最高評議会)は、イスラエルと良好な関係にはない。彼らは注意深く我々を監視しているのだ。

この二人の人物の発言から何をくみ取るべきか、少なくとも、イスラエルとエジプトが相手国に対して、どう考えどう対応していく可能性があるのか、考えてみる意味がありそうだ。