『アメリカの思惑通りにはならないアラブの春のその後』

2012年4月27日

 連続して起こったアラブの春革命は、アメリカが焚きつけたものだ、というのが私の判断だが、それはアラブの多くの識者の認識でもある。

アメリカが軍を送らず、資金もあまり使わずに、現地の人たちを戦わせて、最後にはその国から富を奪うという、新型の戦争であり、その後には新型の植民地支配が、起こりうると考えていた。

しかし、同時に私はそのアメリカの新型戦争と、新型植民地支配は決して容易ではあるまい、とも書いてきた。アメリカが仕掛けたアラブの春革命で、最も関与の度合いが強かったのは、リビアの革命だった。アメリカはイギリスとフランスに攻撃させ、最後の仕上げの段階では無人機を使って、カダフィ大佐の息の根を止めたのだ。

リビアでは革命の当初から、アメリカ、イギリス、フランスの軍事顧問が入り、加えて、カタールが武器と資金と兵員を送り込んでもいた。そしてアメリカは20年間、バージニア州で飼い殺しにしていた、リビアの軍人ハリーファ・ハフタル氏を革命と同時に、リビアに送り返してもいた。

彼はその後、軍の参謀長になった。同じようにアメリカに30年間住み続けていた人物は、帰国して首相職に収まってもいる。彼の名はアブドルラヒーム・キイブ氏だ。彼らに加え情報担当のトップに座った人物は、リビアとアメリカの二重国籍を有する人物だった。彼の名はサーレム・ハーシ氏だ。

情報、軍事、政治の3つの要職を、アメリカ帰りの人物たちが握ったのだから、これでリビアは完全にアメリカの手に落ちたように見えるのだが、その後の動向を見ていると、どうもそうは言い切れなくなってきている。

最近になってアブドルラヒーム・キイブ首相に対する、臨時統治機構(NTC)の見方が厳しくなり、一説によると、アブドルラヒーム・キイブ首相は既に、更迭されたようだ。

リビアでは何万という国民が、武器を手にして革命に参加したが、その後も武器を手放さず、幾つもある彼らのグループが、それぞれに権利を主張し続けている。そして、口々にしかるべき役職を与えろ、と要求しているのだ。

このミリシアの受け皿は、治安警察と軍以外にはありえまい。こうした問題の解決には、アブドルラヒーム・キイブ首相は向いていなかったのであろう。結果的に、リビア国内状況は不安定で危険なまま、放置され続けてきた。その結果が、アブドルラヒーム・キイブ首相の更迭ということなのであろう。

アメリカが送り込んだ三人のうち一人が更迭されると、残りの二人も決して安泰ではあるまい。結果的にアメリカは今回も思惑が外れたということか。