『エジプト大統領選挙の行方はいまだ不明』

2012年4月26日

 エジプトを30年にも渡って支配してきた、ムバーラク大統領は意外にあっけなく打倒された。以来、エジプトでは各派各政党の人たちが、自己主張合戦を繰り返している。

これに輪をかけて、軍最高評議会はどうエジプトの新しい体制を作り上げていくかに、苦慮しているようだ。その第一は、新大統領の選出なのだが、軍最高評議会は軍事裁判所の裁判官を長とする、選挙委員会を設立し、大統領候補者の資格審査を行った。

結果的に最有力とみなされていた、オマル・スレイマーン副大統領、ムスリム同胞団が最初に立てた候補の、ハイラトシャーテル、サラフィ派のハーゼム・アブイスマイル氏の各氏は、立候補資格を認められなかった。

結果的に残った有力候補は、ムスリム同胞団の政党自由公正党党首のムハンマド・モルシー氏、アラブ連盟事務総長だったアムル・ムーサ氏、ムスリム同胞団から候補者として認められなかったアブドルモナイム・アブルフットーフ氏、そして最後の首相を務めたアハマド・シャフィーク氏となった。

ところが、アハマド・シャフィーク氏も旧体制側の人物だとして、立候補資格を認められなかった。しかし、彼が抗議し何とか立候補に、こぎつけることができたようだ。しかし、彼の当選の可能性は、極めて低いのではないか。

そうなると、アムル・ムーサ氏とアブドルモナイム・アブルフットーフ氏の一騎打ちのようだが、そうとばかりは言い切れない状況が出てきた。それは、立候補者を擁立することに失敗したサラフィ組織が、こぞってムスリム同胞団の自由公正党党首ムハンマド・モルシー氏を、押す動きが出てきたからだ。

しかし、それは世俗派の人たちが、許さないのではないか。そうなると、アムル・ムーサ氏が有利なのではないか、という下馬評が広がっている。

選挙結果はどこの国でも、投票箱の蓋を開けてみないと分からない、といわれるが、アラブの選挙はなおさらであろう。どこで何が起こるか分からないからだ。

6月2日に出される予定の、ムバーラク裁判の結果によっては、エジプトは再度大混乱に巻き込まれるかもしれない。そうなれば、選挙そのものが実施されない可能性もあるのだ。

エジプトでは選挙をめぐり、大衆が喜んで選挙の行く末を、最高の話題にしているだろう。それは、この国の国民すべてが参加できる、一番公平で楽しいイベントなのかもしれない。