イランは昨年、350万バレル/日の石油を輸出した記録を有する、大産油国だ。その石油輸出による収入は、1000億ドルにも達している。しかし、その大産油国のイランは、ご存じの通りいま、アメリカを先頭に西側諸国によって経済制裁の、締め付けに苦しんでいる。
単に物の輸出入取引ができないばかりではなく、イランとの銀行決済が凍結され、イランが輸入したくても、あるいはイランが輸出したくても、ドルの流れが禁止されてしまっているのだ。
このアメリカの制裁方針に背いた企業は、アメリカとの取引が禁止される事になる。そうはいっても、これまでイランの石油に依存してきた国々は、何とかこのアメリカの制裁から逃れようとしてきたが、アメリカの厳しい圧力によって、うまくいっていない。
日本も例外ではなく、イランアからの輸入量を漸減させることによって、アメリカの懲罰を受けず、しかもイランとの関係を維持したい、と思っているようだ。インドとイランとの間では、インドの通貨ルピーでの取引を行ってはいるが、それは極めて限られたボリュームの、取引でしかあるまい。
そうした苦しい状況に追い込まれているイランは、官民共にいま、トルコに支店を開くことにより、制裁のダメージを軽減しようと、思っているようだ。
最近、イランの3つの銀行が、トルコに支店を開設している。それはテジャーラト・バンク(商業銀行)、パサルガド・バンク、そしてもう一つの銀行だ。
トルコで外国の銀行が支店を出し、金融活動をするには、2000万ドルの資金があればできることになっているが、実際に運営するとなると、3億ドルのデポジットが必要なようだ。
イラン企業のトルコへの進出は、金融部門だけではなく、他の民間企業によっても行われている。これまで1500社ほどトルコにあったイラン企業の支店が、昨年1年間を通じて590社増え、現在ではイラン企業のトルコ国内支店が、2140社に上っているということのようだ。
イランに対する経済制裁が意外なところで、トルコの経済を支えることになりそうだ。IMFはトルコの経済が脆弱だという報告を出していたし、他の機関からも、短期的投機的資金の流入が多いことを挙げ、不安定だという分析が出されていた。加えて、トルコが抱える対外債務が大きいことも、マイナス材料として指摘されていた。
イランの窮地が、案外トルコの経済を下支えするのではないか、と思われる昨今だ。