『サドルが動き出したイラク・マリキー首相はどうなる』

2012年4月25日

 アメリカ軍が駐留し始めてしばらくの間、サドル師が引きるマハデイ軍がイラク国内で、その存在を誇示していた。宗教組織が持つミリシアが、これだけの力を持つ者かと、驚愕したほどだった。

その後、マリキー氏が首相に就任して以来、サドル師は派手な行動を控えていた。マリキー首相が同じシーア派の出身であることから、ある程度の信を置いていたのかもしれない。

しかし、サドル師は少し前の段階から、クルド問題にも首を突っ込み始めた。クルド自治区のバルザーニ議長に対し、一定の理解を示していたのだ。バルザーニ議長はイラク中央政府との間で、石油輸出代金の配分でもめていたからだ。

そして今、サドル師は明確に政治への関与を、再開したのではないかと思われる。サドル師は最近、マリキー首相の政治手法は、独裁者に通じると批判し、彼を首相の座から引きずり降し、他の人物をイラクの首相に就任させたい、と考え始めているようだ。

その人物の名前は、クサイ・アルスハイル氏だ。この人物はイラク議会の副議長のようだが、今まであまり名前を聞かない人物だ。

最終的に、サドル師がこのクサイ・アルスハイルを押し続けるかどうかは、イラク国内の政治状況に左右されるだろうが、具体的な名前まで出てくるということは、マリキー首相の立場が不安定化してきているということが、ほぼ確実だということの、証明になるのではないか。

確かに、現在のイラクではクルド地区分の、離独立が語られ始めており、キルクークの石油利権をめぐり、クルド自治政府とイラク中央政府との間には、厳しい対立関係が出来てきている。その流れの中で、クルド自治地区が分離独立するという、選択肢も出てこよう。

それは、イラクを弱体化させるものであることは、間違いあるまい。だからこそ、マリキー首相はクルド地区の自治政府に、圧力をかけているのであろうし、そのうまみを熟知しているトルコは、今の段階からクルド自治政府との、特別な関係を構築することで、利益を得ようと考えていよう。

トルコにしてみれば、イラク全体の取引額の半分以上が、クルド自治政府との間で結ばれていること、PKK(クルド労働党)問題解決など、多くの国内問題がイラクとクルド地区に直接的にかかわり合っているのだ。

サドル師はトルコとの関係を、どう考えているのだろうか。それを探るには、もう少しクサイ・アルスハイル氏のデータが必要なようだ。