『マリキー首相の発言・イラクとトルコの緊張』

2012年4月22日

 

 イラクのマリキー首相が突然、トルコを敵対国家だと非難し始めた。それはイラク・クルド地区のバルザーニ大統領の、トルコ訪問に起因しているようだ。バルザーニ大統領はイラク中央政府が、石油生産について公平な対応をしていないことを、非難してきていた。

 バルザーニ大統領の主張によれば、クルド地区のキルクークで生産される、石油輸出代金のうち、クルド政府が受け取るべき操業経費などを、受け取っていないということのようだ。そのため、クルド政府はイラクの石油輸出停止を、継続すると主張してきていた。

 イラクとトルコの間には、これ以外にもイラク・スンニー派のハーシミ副大統領に対する、トルコ側の対応にも問題がある。イラク政府はハーシミ副大統領が、暗殺を計画したことで逮捕しようとしたが、ハーシミ副大統領はクルド自治政府に庇護を求め、クルド自治政府は長期間彼をかくまっていた。

 その後、トルコ政府がハーシミ副大統領を受けいれている。次いでハーシミ副大統領はカタール、サウジアラビアなどを訪問している。マリキー首相にしてみると、ハーシミ副大統領を受け入れることで、スンニー諸国がシーア派のマリキー首相に敵対していく動きだ、という警戒心があるようだ。

 マリキー首相はトルコが地域での、覇権確立を狙っている、とも非難しているが、これはトルコにとって、極めて不愉快な発言であろう。トルコ側はマリキー首相の発言は、イラク国内における彼の立場を強化するためのものだ、と非難している。

 マリキー首相は近くシーア派のイランを訪問し、トルコとの緊張関係について、討議してくる予定だ。そのことは、トルコとイラクの関係が、両国内部では緊張の度合いが、非常に高まっているということであろう。

 トルコとイラクの関係は、双方にとって極めて重要であることは、述べるまでもない。トルコにとってイラクは、ドイツに次いで重要な市場になっているのだ。そのイラクとの取引で、イラクのクルド自治区はイラクとの取引総額の、半分以上の取引額に達している。

 イラク側にしてみれば、トルコ企業がイラク国内で復興支援をしており、イラク国内のインフラの整備は、トルコ企業が担っている割合が非常に高い。それは、トルコの企業がイラク国内の不安定なことを、あまり気にしないで進出しているためだ。

 トルコとイラクの関係悪化は、イラク復興が遅れるということであろうし、トルコ側にとっては経済発展の、足かせになるということであろう。