『欧米は今後アラブからの取り付けに苦しむ』

2012年4月18日

 アラブの春はいろんな結果を、いろんな国々にもたらしているようだ。アラブの春革命に見舞われた国々は、いま塗炭の苦しみのなかにあり、国家分裂の危機に直面している。今後いつまでかかったら国家を再建していけるのかさえ、不明確な状態だ。

エジプトでは大統領選挙の行方が、全く分からない状態にあるし、リビアは3分割される危険性がある。しかもリビアの場合、革命後に誕生した政府に対する不満が暴発寸前にあり、アメリカが送り込んだアブドルラテイーフ・アルケイブ首相は、追い出されそうな雲行きだ。

アラブの春の革命の後に、これらの国々は財政難に直面しているが、そのなかで出てきたのが、前権力者たちの在外資産問題だ。チュニジアのベンアリ前大統領と家族、そして高官たちの在外資産は、チュニジア国民のものだという考えが出てきているし、エジプトでもリビアでも同様の動きだ。

リビアではカダフィの隠し資金探しが、一時期大きな関心事となっていたが、最近はあまり噂にならなくなっている。しかし、ICC(国際刑事裁判所)ではなく、リビアの法廷でカダフィの息子サイフルイスラーム氏を裁くということは、どこにカダフィ資金があるかを、サイフルイスラームに氏白状させるためではないか。

エジプトも同様で、ムバーラク大統領とその家族の在外資産、そして高官たちの資産を、エジプト政府は調査しその回収に乗り出しそうだ。その最初の攻撃ターゲットとなったのがイギリスだ。イギリスにあるムバーラク資産を返還するように、エジプト政府が正式に要求し始めている。

イギリスと同じように、フランスやアメリカも要求される時期が来よう。その時各国は、それを引き渡すのかあるいは何らかの理由を付けて、支払いを先延ばしをし、返還の義務から逃れようとするのか。

イギリスはエジプト政府の要求に対し、イギリスの法律に則って対応すると返答している。それは素直にイギリスの好意的な対応と理解すべきなのか、あるいはイギリスの法律では、あくまでも預金者のサインが無ければだめだ、とするのかいまの段階では不明だ。

イラクも現在自国通貨が崩壊の瀬戸際にある。そのことはアメリカに対して同様のクレームが、イラクから付けられる可能性があるということでもあろう。

アラブ諸国の大衆をそそのかし、旨い具合に再度植民地支配をもくろんでいた欧米諸国は、これから困難な問題を抱え込んでいくことになる、ということではないか。もし欧米諸国が凍結資金の引き渡しを行わない場合、他の国々が欧米の銀行から、一斉に預金を引き出す可能性があろう。それは金融不安にもつながるのではないか。