『ムスリム同胞団の独走はエジプトをどうするのか』

2012年4月 2日

 長い間エジプト政府に弾圧され続けてきた、ムスリム同胞団がエジプト革命後に自由を手に入れた。その後のムスリム同胞団の躍進ぶりは、目を見張るものがある。それもそうであろう。長い間政府の弾圧を潜り抜けて生き続けてこられた組織だけに、その結束は尋常なものではなかったようだ。

先に実施されたエジプトの議会選挙では、ムスリム同胞団がほぼ半分に迫る得票を集め、半分近い議席数を獲得した。もう一つのイスラム原理主義組織サラフィのヌール党を合わせると、優に過半数を超えることになった。

 その後のムスリム同胞団の動きは、まさに破竹の勢いであった。議会の過半数に近付いた後は、憲法改正委員会議長職を手に入れることとなった。これでムスリム同胞団はエジプトの権力を、ほぼ全面的に掌握したことになるが、それだけでは済まなかったようだ。

これまで、ムスリム同胞団は軍最高評議会との間で、暗黙の相互承認のようなものがあったのだが、ここにきてそれが崩れ始めている。ムスリム同胞団は他の政党や軍最高評議会に対して、大統領職を獲得するつもりはない、という発言を繰り返して来たが、ここに来てその約束を反故にしたのだ。

ムスリム同胞団がハイラト・アッシャーテル師を大統領候補に決めるのに、会議は8時間を要したと伝えられている。ハイラト・アッシャーテル師が適任か否かではなく、大統領選挙に候補者を立てるか否かでもめたのであろう。それだけ賛否両論があったのであろう。

会議後にムスリム同胞団から、脱退する幹部も現れている。そればかりか、これまで一衣帯水の関係にあったサラフィ組織との関係にも、ひびが入り始めたようだ。ムスリム同胞団はハイラト・アッシャーテル師を支持してくれるように申し入れたが、どうやら冷たく跳ね付けられたようだ。

それも無理はなかろう。これまでは大統領を擁立しないとしていたムスリム同胞団は、サラフィ組織の候補者ハーズム・サラーハ・アブ・イスマイル師を支持するようなそぶりを見せていたのだ。それがここに来て、完全に裏切られたという感情を、サラフィ組織のメンバーは抱いていよう。しかし、この候補者ハーズム・サラーハ・アブ・イスマイル師の人気は侮れないものがある。

加えて、ムスリム同胞団が立候補を認めなかった、アブドルムナイム・アブルファットーフ氏は若手のムスリム同胞団員の間で、絶大な人気を勝ち得ているのだ。彼はムスリム同胞団の豹変によって、支持を増す可能性があろう。

そして軍はどう対応するのか、軍はムスリム同胞団も立候補者を釈放し、前科を消し立候補を可能にしてくれたのだ。そして革命の立役者である世俗派は。