「ネタニヤフは国内問題隠蔽にイランの脅威扇動」

2012年3月31日

 イスラエルの野党カデマ党の党首に、選出されたばかりのシャウル・モファズ氏が、非常にデリケートな発言をしている。それはネタニヤフ首相を真正面から攻撃する内容なのだ。

 シャウル・モファズ党首はネタニヤフ首相のイラン対応について、イスラエル国内問題から国民の目を、そらすためのものだと語ったのだ。つまり、イスラエルでは社会問題、経済問題が悪化しており、ネタニヤフ首相にその非難の矛先が向かって来るので、ネタニヤフ首相はそれを誤魔化すために、イランの核兵器の脅威を、イスラエル国民に対して煽っているというのだ。

 そのことにより、ネタニヤフ首相は彼自身をイスラエル国民に、イスラエルの直面する重大な脅威から救う、英雄のように見せようとしているというのだ。このシャウル・モファズ党首の発言は、イスラエルのチャンネル2とのインタビューのなかで、先週の木曜日(329)に語られたものだ。

 シャウル・モファズ党首はこのことに加え、イランはいまだに核保有国にはなっていいないし、核兵器が造られるとしても、まだ大分時間があるというのが、世界の専門家の共通した考えだとも、語ったということだ。

 シャウル・モファズ党首の発言内容は、イスラエルのマスコミで報道されたが、この発言に一番喜んだのはイランであろう。イランはネタニヤフ首相攻撃と、自国の核政策に対する正当な援護に、このインタビュー内容を活用する気のようだ。

 イランのプレステレビは早速このニュースを伝えたが、そのなかでハメネイ師の発言を紹介してもいる。つまり、イランには核兵器を造る意志が、全く無いということだ。

 すでに、イスラエルによるイランに対する攻撃が、今年に限っては断念されたということをお伝えしたが、そう決断したネタニヤフ首相の立場は、弱くなっているのではないか。シャウル・モファズ党首がこのような発言をしたということは、イスラエル国民の多くが知ることになるわけであり、イスラエル国民はそのことに、怒りを覚えるのではないか。

 イランの核兵器があたかも明日にでも、イスラエル国民の頭上に落ちてくるような脅威を煽り、結果的にはそれが立ち消えになっていくとすれば、国民はネタニヤフ首相に騙された、という気持ちになろう。 

 その辺を十分に計算しての、シャウル・モファズ党首の発言であったろう。もちろん、彼の発言に嘘はあるまい。彼が言うように、イスラエル国内には物価高、住宅難、失業問題と、多くの難問が山積しているのだから。