これまで世界の景気を後退させるのではないか、あるいは破壊するのではないか、と懸念されてきたイラン攻撃の可能性が、ここにきて急激に後退し始めている。
イラン攻撃に際し、最も重要な軍事基地となるであろうカタールは、自国をイラン攻撃に使わせないと明確に、イラン攻撃反対の立場を公表した。それはそうであろう。イランに近い小国カタールが、もし戦争に巻き込まれれば、一瞬にして廃墟と化すであろう。
同時に、このカタールのイラン攻撃反対の立場は、アメリカの意向も反映していると考えるべきであろう。アメリカがカタールに対し、イラン攻撃反対を公表することを許した、ということではないのか。
トルコもエルドアン首相がイランを訪問し、イランのガス石油を購入し続けることを明言しているが、これも同様にトルコがイラン攻撃に反対している、という意思表示であろう。
そうした中で、イスラエルだけが未だに、イラン攻撃の権利を主張している。ネタニヤフ・イスラエル首相の訪米時、オバマ大統領との話し合いでは、イラン攻撃の合意が生まれなかった。アメリカ側がネタニヤフ首相に対して行ったリップサービスは『もしイランが核兵器の開発をしていることが明確になった場合は攻撃する。』というものだった。
アメリカからはその後、CIAの情報が漏れてきているが、イランの核施設に関する明確で十分な情報を、アメリカもイスラエルも持っていない、というものだった。加えて、イランの核施設を攻撃しても、6ヶ月後にはイランのウラニューム濃縮が再開される、という見通しも出ている。
前のIAEA事務局長であったムハンマド・エルバラダイ氏は、イラン攻撃はクレイジーだと強く反対している。イギリスの国会議員も、同様の発言をしている。
そうした流れの中で、最近イスラエル政府は、今年中のイラン攻撃は見合わせると言いだしている。イスラエル政府は来年については明言していないが、来年になればアメリカの大統領選挙が終わっていることから、例えイスラエルがイラン攻撃をしようと思っても、アメリカを巻き込むことはできまい。
世論調査によれば、イスラエル国民の大半は、イスラエルのイラン攻撃について、『アメリカと共に行うのであれば賛成』と答えている。つまり、イスラエルのイラン単独での攻撃については、賛成しないということだ。これで当分の間、安心ができそうだ。