シリアでは反政府運動が起こってから既に、9000人近い犠牲者が出ている、と世界の報道は騒ぎ立てている。騒ぎ立てるという表現をあえて使ったのは、実数の確認ができないことと、犠牲者の何パーセントが市民であり、何パーセントが軍人なのか分からないからだ。
9000人という犠牲者数を耳にする時、だれもがその犠牲者は市民だと思うだろう。そして、それに続いてシリアのバッシャール・アサド体制はひどいことをする、と思うだろう。
事実がどうであるかは分からないが、実際に相当数の犠牲者が出ていることであり、それに伴ってトルコには多くの難民が、逃れてきている。現在トルコにいるシリア人難民の数は、17000人と報告されているが、今後の状況次第で、それが10万人にも達するのではないかという強い懸念を、トルコ政府は抱いている。
1日一人の難民に5ドルの援助をしたとして、10万人に達した場合、援助に必要な費用は50万ドルにも達するのだ。それが1カ月では1500万ドルにも上ることになるのだ。
つまり、トルコにしてはシリアの問題は、他国の問題ではなく、自国の問題となっているのだ。難民の流入を阻止することは、人道的に出来ないことであり、受け入れが続こう。トルコがシリアの難民問題に対する対応で、決断しつつあるのはシリア国内に、バッファー・ゾーンを構築することだ。
しかし、それはシリア軍とトルコ軍が武力衝突する可能性のある、危険なものでもあろう。シリアがトルコの考えるバッファー・ゾーンを、シリアの領土内に構築することを放置するわけがない。なぜなら、そこは反バッシャール・アサド体制の、ゲリラの巣窟になることが、分かり切っているからだ。
韓国で先日行われた核をめぐる会議で、トルコのエルドアン首相とアメリカのオバマ大統領が、シリア対応について意見交換をした。そのなかで明らかになったことは、アメリカはあくまでも武力行使に至る、状況は作りたくないということであり、トルコは武力行使も辞さずというものだった。
この点ではトルコとアメリカの考えは、何の合意店も見いだせなかった。そこで公表されたのは、トルコとアメリカが、トルコに流入して来たシリアの難民に対して、人道支援をすることで合意した、というものだった。
トルコはバッファー・ゾーンの構築に近く動き出すであろう。それはシリアとの武力衝突を、生むことが予測される。いやな言い方だが、それ以前に、シリアでバッシャール・アサド大統領暗殺や、クーデターが起こることを望む。