以前から必ず起こるだろうと思っていた、エジプトの軍とムスリム同胞団の対立が、表面化してきたようだ。それは軍が半ば結成した政府を、バック・アップしていることに起因しているようだ。
その発端は、アメリカからの援助をめぐるエジプト政府と、ムスリム同胞団の意見の違いだったようだ。政府は軍の意向を受けて、アメリカ政府が送る援助のうちの、軍事援助をそのまま軍に渡したい、と考えているだろう。
そのことは、軍も今までどおりの、既得権と受け止めていよう。もう一つの対立点は、IMFからの援助という名の借り入れがある。この金の使い道をめぐり、ムスリム同胞団はエジプト政府に対し、使途を明確にするように迫った。
過去には政府の高官が、公金を私的に使用するケースが多かった、いわばIMFからの資金援助や外国からの借款は、汚職の巣だったのだ。
ムスリム同胞団は現在の政府が、軍最高評議会によって結成されたものである以上、その政府が犯した失敗は、軍最高評議会にあるとして非難し、外貨準備の大幅減少、燃料不足社会不安、法の不公正などを挙げている。
ムスリム同胞団はこれらのことを根拠に、軍最高評議会に対し、現在の政府を解散させ、ムスリム同胞団の政党である、自由公正党が第一党になったのだから、その自由公正党に内閣を結成させろと詰め寄っている。
このムスリム同胞団の姿勢は、真正面から軍と対峙するものだが、その結果、今後は今までのような、不安定な軍とムスリム同胞団とのハネムーン時代が、終わることを意味していよう。
ムスリム同胞団が今後を、有利に展開していけるのかというと、必ずしもそうではあるまい。なぜならば、憲法起草委員会はメンバーの大半が、イスラム原理主義のムスリム同胞団の自由公正党メンバーと、サラフィ組織のヌール党のメンバーによって、構成されているからだ。
このことに対しては、エジプトの世俗派が猛烈な反発を示している。したがって、軍がムスリム同胞団と対立した場合、エジプトの大衆が全面的に、ムスリム同胞団を支持するとは限らないのだ。
それどころか今後、軍とムスリム同胞団が衝突するようなことになれば、大衆は軍を支持する可能性もあるのだ。
そうは言っても、まだ本格的な対立が始まったとは、言い切れない段かだから、あまり深読みはしないことにしよう。いずれにせよ、今後、軍とムスリム同胞団との関係が悪化し、対立状況を生み出していくことは、間違いなさそうだ。