フランスのトールーズにあるユダヤ人学校そばで、一人のラビと彼の二人の子供、そしてもう一人のユダヤ人の子供が銃殺されるという、痛ましい事件が起こったのはつい最近のことだ。
その後、犯人はアルジェリアのムスリム、イスラム過激思想の持ち主だ、と紹介されている。彼はアフガンでタリバンから軍事トレーニングを受けた経歴があった、彼はイスラエルでナイフを所持していて、逮捕された犯歴がある、といった情報が流れてきた。
これらを読んでいると、ますますユダヤ人とムスリムの敵対的な関係が、強調されていく懸念を抱くのは、私だけではなかろう。いまイスラエルがイランを軍事攻撃したいという意欲が、世界中に伝わってもいる。
そうしたなかで、フランスの映画監督がある歴史的事実を映画にして、話題になり始めている。LUOMMESLIBRES(自由の人とでも訳すのだろうか)というのがその映画のタイトルだ。
映画の内容は、フランスがドイツに占領された第二次世界大戦の頃、アルジェリアから渡ってきた14歳のユダヤ人少年サリム・ハラリを、パリの大モスクのイマームが、ナチの追及からかくまったという話だ。
イマームのベン・ガブリ師はこの少年を、ユダヤ人ではなくムスリムだとするために、彼の先祖の墓まで作ったという話だ。その後、この少年は著名な歌手になるが、彼はエルサレムのコンサートで『アラブ人・アラブの国よ永遠なれ!!』と叫んだというのだ。
この映画がきっかけで、多くのイスラエル人歴史学者たちがコメントしているが、総じて高い評価をこのベン・ガブリ師に向けている。ヤド・バシム・ホロコースト記念館の責任者は『ヤド・バシム・ホロコースト記念館には24000人のユダヤを助けた人たちのリストがあるが、パリの大モスクのイマームについては記録がない、調べてみる。』と語った。
このモスクが救ったユダヤ人は100人程度だそうだが、「人数は問題ではない。」とイスラエル人学者はコメントしている。同時に、ナチの側についてユダヤ人狩りを手伝ったアラブ人もいた、と他の学者は語っている。
イスラエルとイスラム世界の緊張が高まっている昨今、この映画がある種のメッセージを込めて製作されたとしても、歓迎すべきではないか。もちろん映画一本がイスラエル・ユダヤとイスラム世界の緊張を、ほぐすとは考えないが、一助になることは確かであろう。