パレスチナ自治政府幹部の金遣いの荒さは、つとに知られているが、ここにきてパレスチナ自治政府は、外国からの援助が大幅に遅れているために、資金難に直面していると騒ぎ始めた。
世界中が経済悪化の中にあるのだから、パレスチナに対する援助が遅延したり、削減されることは予測が付いていたろうし、当然のことであろう。しかし彼らは自助努力という考え方をしない。あくまでも、パレスチナ自治政府の財政が逼迫したのは、世界が援助しないから悪いのだ、という姿勢を崩さない。
日本人のほとんどが、パレスチナの実体を知らず、援助するのが当然、という考えのようだ。確かにパレスチナの大衆は貧しい。しかし、イラク、シリア、エジプトの貧民などに比べれば、パレスチナ人の貧民層のほうが、はるかに豊かなのだ。それは国際的な援助があるからだ。
パレスチナ自治政府の幹部は、家族で何台ものベンツを所有しており、彼らの自宅はお城のような豪邸がほとんどだ。その実態を知れば、腹が立って援助などしたくない、と思うのではないか。
そのパレスチナ幹部たちがここに来て、資金難に困り何を言い出したかというと『イスラエルとパレスチナを一つの国にするのがいい。』というのだ。それはイスラエルの金にたかって、豊かな生活を続けたいということだ。
もちろん、それはイスラエルを窮地に追い込むことになろう。人口比でパレスチナ人のほうが多くなり、統一国家の元首も首相も、パレスチナ人が就任することになるという、馬鹿げたことが起こりうるからだ。
イスラエルにとってはパレスチナ人との人口比率が、重要な問題になっているのだ。たとえヨルダン川西岸地区や、ガザのパレスチナ人を加えなくとも、イスラエル国籍を有するパレスチナ人の自然増の結果、将来は確実にパレスチナ人のほうがイスラエル国民のなかで、多数を占めるようになろう。
この問題を解決するには、出来るだけ多くのパレスチナ人を、ヨルダン川西岸地区からヨルダンに追放することであり、ガザ地区のパレスチナ人を、エジプトに押し付ける、ということではないか。
幸いなことに、エジプトではムスリム同胞団が与党第一党になり、発言力を増している。彼らはガザ・ゲートを開き、エジプトとガザの自由な往来を認めるべきだ、と主張し始めている。
軍が結成している現在のエジプト政府は、ムスリム同胞団の考えに難色を示しながらも、反対し難い状況に追い込まれている。そこで政府が決定したのは、燃料不足に苦しんでいるガザ住民への援助として、ガザのラファ・ゲートからガザへの石油搬入だった。これはイスラエル側も認めて実現している。
近い将来、ムスリム同胞団が政府を牛耳るようになれば、ガザとのより強固な関係を構築していくだろう。なぜならば、現在ガザを統治しているのは、エジプトのムスリム同胞団と同じ、ムスリム同胞団の組織ハマースだからだ。
したがって、エジプトでムスリム同胞団が政権を握った段階では、ガザが実質的に、エジプトの一部に組み込まれる、可能性があるということだ。過去の歴史にも、ガザがエジプトの一部であった時期があるのだから、決してこの予測は空絵事ではない。それはイスラエルの望むところでもあろう。
以前にも書いたように、イスラエルが計画しているヨルダン川西岸地区の、鉄道計画が進められれば、大量のパレスチナ人がそれに反対し、ヨルダンに追放されることになるだろう。
パレスチナの将来は、パレスチナ国家の樹立ではなく、エジプトとヨルダンへのパレスチナ人の併合、ということになるのではないか。それを阻む唯一の道は、イスラエルとイランとの間に、戦争が起こることではないのか。
その結果、イスラエルはイランとの戦争に勝っても負けても、国家が疲弊して計画通りには、物事を進めていけなくなる、と思われるからだ。イスラエルもアメリカに寄生する国家であり、構造的にはパレスチナ自治政府と、類似している点がある。結局は自分の足で立たなければならない、ということを教えられるような気がするのだが。