シリアのバッシャール・アサド大統領は人否人で冷血で、独裁者だという評価が世界のマスコミで踊ってきた。そしてそのニュースを見る人たちのほとんどが、そうなのだろうと思うようになっていた。
しかし、最近になってどうもシリアに対する、風向きが変わってきたようだ。以前とは違って、反体制派の一部に対する、厳しい非難の声が上がり始めたのだ。彼らはテロリストと呼ばれるようになり、実は彼らが凄惨な殺人を繰り返してきていたのだ、と報じられるようになってきている。
それは事実であろう。シリアのバッシャール・アサド体制を打倒するために、過激派がシリア軍や内務省の犯行として、多くのシリア国民を殺してきたことは、間違いなかろう。
だが、もう一方にはシリア軍によって、殺害された人たちも多数いるのだ。そこが問題であろう。戦争で自派が正しいと世界に知らしめるためには、平気で自派(?)の人間を殺し、敵側による犯行と非難することは、これまでの世界の歴史のなかでも沢山あったろう。
問題はこのシリアのバッシャール・アサド大統領に対する、どちらかと言えばひいき眼な流れが、今後どうシリア問題に影響していくかということだ。そもそものこの流れの起こりは、アナン氏のシリア問題仲介によるのではないか。
ロシアのラブロフ外相も時を同じくして『バッシャール・アサド大統領は多くの間違いを犯してきた。我が国はシリアの体制を支持しているわけではない。』といった発言をし始めている。
一時期はヨーロッパ諸国の大使館が、ダマスカスから撤退したこともあり、欧米による軍事攻撃もありうるかと思わせたのだが、どうやら平和的な解決努力が、今後当分の間続けられそうだ。
しかし、反体制派のテロ集団は何とかして、この平和的な流れを粉砕したいと思い、そう行動するだろう。そのことはこれまで以上に、残虐な殺戮がシリア国内で展開されるということを、予測すべきではないのか。
同時に、誰がこのテロ集団のスポンサーなのか、ということについても追及が及ぼう。今のところサウジアラビアが、その非難の矢面に立ってきている。一時期はカタールも声高にシリア体制の打倒、軍事介入を口にしていたが、突然静かになった。
しかし、イスラエルのペレス大統領は『バッシャール・アサド大統領は早晩打倒されよう。そのことはシリアの新体制とイスラエルの間に、新たな問題を生み出そう。』と語っている。あまり明るい未来ではないということか。