シリアにもムスリム同胞団組織が存在する。このムスリム同胞団は先代ハーフェズ・アサド大統領の時代に、徹底的に弾圧され地下に潜っていた。しかし、だからといって、組織そのものが消えたわけではなかった。
昨年から始まったシリアの革命運動のなかで、シリアのムスリム同胞団は冷静に事の成り行きを見ていた。そして遂に明確にムスリム同胞団は『バッシャール・アサド体制に反対する。』という立場を明らかにした。
シリアの強力な体制に対し、反旗を翻すということは、死を覚悟することであり、ムスリム同胞団は再度命がけのアサド体制に対する、抵抗闘争に踏み出したということだ。
しかし、ムスリム同胞団はシリア革命の現状を、決して甘くは見ていないようだ。トルコのザマン新聞のインタビューに応じた、シリア・ムスリム同胞団のトップであるムハンマド・ラーイド・シャクファ氏は、トルコだけがシリア問題解決に大きな役割を果たせると語り、外部からの軍事介入があるのであれば、トルコがリードして欲しいと語った。
そしてイランやイラクがシリア政府側に武器を供与し、情報部員を送り込み、支援しているのに、何故反体制側には国際社会からの、支援が来ないのかと不満を述べた。
ザマン新聞とのインタビューのなかで、ムハンマド・ラーイド・シャクファ氏は、革命が成功するにはまだ時間がかかるが、必ず現体制は打倒されると語り、革命闘争が長引くのは、はアサド体制側がイランなどから軍事支援を受け、反体制派を抑え込めているからだと説明している。
同時にインタビューのなかで、ムハンマド・ラーイド・シャクファ氏は明確に、自由シリア軍(FSA)と共闘することを宣言している。
ではムスリム同胞団などの反体制派が勝利した後、シリアはどうなるのかということについて、ムハンマド・ラーイド・シャクファ氏は『もしムスリム同胞団が権力を掌握したら、議会を設置し民主的な体制を樹立する。法による統治を行う。』と語っている。
このインタビュー記事を読んでいて感じたのは、ムスリム同胞団はシリアの革命には、まだまだ時間がかかると見ているということだ。それは、冷静な判断の結果であり、ムスリム同胞団は欧米などの外国が、軍事介入してアサド体制を打倒するということは、あまり期待出来ないと考えているのではないか。
冒頭に出てきたトルコ軍が中心となる、外国軍の介入を望んではいるが、大きな期待はしていないのかもしれない。あるいは近い将来にそれが実現するとは、考えていないのかもしれない。そうであるとすれば、ムスリム同胞団は相当の流血と、犠牲を覚悟したということであろう。