サウジアラビアが危険水域に入りつつあるのではないか、という情報を何度か書いたが、ここにきてその勢いは増すばかりだ。一つは経済問題であり、もう一つは石油問題、そしてシーア派だけではない、サウジアラビアのスンニー派のインテリたちによる政府批判だ。
サウジアラビアはまるで石油に浮かぶ、富豪国家のように言われているが、実は貧困層が国民の20パーセントを超えている、という現実が伝えられ始めている。1軒の家に10人以上の家族が住んでおり、その家族の誰かが仕事にありついていれば、その人の稼ぎで家族全員が食べていけるというものだ。
サウジアラビアの平均月収は1300ドル(80円換算で104000円)だというのだ。これを10人の家族で割ると一人分は10400円ということになる。
政府の補助で米やパン、肉やお茶、砂糖は安価に買えるものの、それ以外のものを買う余裕は無いのではないか。つまり食べて寝るだけの生活ということであろう。唯一の娯楽はテレビぐらいしか想像できない。電気代が安いことから、エアコンは付けっぱなし、電灯もそうであろう。しかし、そうしたことが、サウジアラビア唯一の外貨収入源である、石油の備蓄量をどんどん減らしているのだ。
遂には、その石油の国内消費量が、輸出量を大幅に上回る状況が、出てきたばかりではなく、近い将来石油が輸出できなくなる、という予測すら出てきている。そして、石油輸出が減少するなかで、2014年にはサウジアラビアが、財政赤字国家に転落するだろう、という予測も出ているのだ。
加えて、サウジアラビア国内では、インターネットの普及も一因であろうが、インテリの間で政府に対する不満が拡大している。既得権者の経済分野での独占と、政府関係者の汚職、民主化の進展が全く望めない状況に対する、怒りがあらわになってきているのだ。
最近の出来事では、アブハの大学で女子学生が、諸権利を要求してデモをしたところ、治安警察と宗教警察によって殴打され、50人以上が負傷し、死者も出たという情報が、伝えられてきている。
サウジアラビアに関するこうした悪いニュースが、最近頻繁に出てくるようになったということは、国内でも変化のうねりが高まってきているということであると同時に、外部でもサウジアラビアの現状を変えなければならないという考えが、拡大してきているということではないのか。そのことは、日本のサウジアラビア依存のエネルギー政策を、根本から考え直さなければならないということでもあろう。