リビアの東部が分離し、自治権を持つ方向に、動き始めているということは、すでにご報告したが、この自治区は表面的には、リビアから分離独立するものではないと語っている。
リビア中央政府との関係について、このキレナイカ地方(バルカ)を自治区にしようと思っている人たちは、キレナイカ(バルカ王国)自治区を創立するだけだ、と語っている。しかし、その自治区は独自の議会を持ち、警察を持ち、裁判所を持つというものであり、加えて、イドリス・サヌーシー元国王の末裔アハマド・ズベール・サヌーシー氏を、トップに据えるというものだ。
中央政府については、外交政策、国軍、石油資源について権限を持つとしている。しかし、リビアがトリポリタニア、フェザーン、キレナイカの3地域に分割された場合、キレナイカ(バルカ)の面積はリビア全面積の半分以上を占め、ほとんどの油田地帯がそこに含まれることになるのだ。
当然のこととして、このキレナイカ(バルカ)の動きは、現段階では自治と言っているが、将来的には分離独立を目指しているのであろう、と中央政府は疑問視している。このため、中央政府のムスタファ・アブドッジャリール代表は、軍事力を行使しても、このキレナイカ(バルカ)の動きを阻止する、と強い立場を示している。
そうであるとすれば、今後キレナイカとトリポリタニアとの間で、戦闘が起こることが予測されよう。そのことは、油田地帯が危険にさらされることであり、リビアの石油が世界市場に、流れてこなくなるかもしれない。
イランのイスラエルやアメリカとの緊張状態が、石油価格を押し上げており、それが世界経済に悪影響を及ぼしているなかで、リビアの石油が止まるようなことになれば、世界は大パニックに陥るであろう。なかでも、リビアの石油は主にヨーロッパ諸国に流れていることから、ヨーロッパ諸国の経済悪化や、ユーロ安という現象を生みかねない。
欧米諸国や中国はリビアの現状に、どう対応していくのであろうか。いまのところ、キレナイカとトリポリタニアの対立解消に、仲介できる国はなさそうだが、ここでもトルコの仲介が、ものを言い始めるのであろうか。
リビアの隣国であるエジプトにとっては、リビアの不安定化は石油価格の値上がり以上に、労働輸出の面で頭の痛い問題になりそうだ。そうでなくても、悪化の一途をたどるエジプトには、相当こたえる問題となろう。