アメリカのオバマ大統領は『シリアのバッシャール・アサド体制は余命いくばくも無い。』と公言している。それはシリア国内情勢を分析した結果ばかりではなさそうだ。
アメリカはフランスと並んで、武器を秘密裏にシリアの反政府派に送っている、とイランは非難している。それとアメリカの意向を受けたサウジアラビアとカタールも、シリアの反政府派に武器と資金を送っているという情報が流れているが、ほぼ間違いないだろう。
そればかりか、イランの分析ではアメリカが直接軍事攻撃を、シリアにかけるということのようだ。イランの情報筋によればアメリカの国防省は、幾つかのシリア攻撃パターンを検討済みだということだ。つまりオバマ大統領が命令さえ下せば作戦は即実行されるということだ。
加えて、在シリア・イギリス大使館がスタッフを国外退去させているし、フランスも同様の措置を取ったようだ。つまり、両国の外交官や民間人が、シリア国内に留まることは、極めて危険な状態になりつつあるということであろう。
そして、ロシアのシリア対応を調べていると、極めて冷たいものになりつつあるようだ。ロシアにとっては、シリアのタルトース港が唯一の地中海沿岸で、ロシア海軍が使用できる軍港であることから、ロシアはシリアのバッシャール・アサド体制を死守するだろう、という見方が主流だったが、ここに来て風向きが変わったようだ。
ロシアのプーチン首相はシリアについて『バッシャール・アサド大統領の時代が今後も続くかどうか分からない。』と語ったとアルハヤート紙は報じている。
その言葉のなかには、ロシアがバッシャール・アサド体制を守るという意志が、全く含まれていないことがわかろう。
世界の国々はシリアの国内状況が、あまりにも酷い状態になっていると認識している。この状況を打破しシリア国民を虐殺から救うためには、力でバッシャール・アサド体制を、打倒しなければならないと考え始めているようだ。
ロシアのプーチン首相はそうした世界の趨勢を考え、一旦はシリアから手を引いた方がいい、と判断したのではないか。あるいは既に、アメリカとの間で裏取引が、成立しているのかも知れない。
リビアの場合と同じように、シリアの場合も外国の思枠によって、小規模な政府に対する改革要望デモが、何時の間にか政権打倒デモに変わり、遂には内戦に至っている。
シリアに武器が大量に送られるだけでも、相当の死傷者が出ることが予測されるが、それに加えて、アメリカがシリアを攻撃することになれば、犠牲者の数はおびただしいものになろう。それが正しい対応方法なのかと問いたい。