シリアの反体制派の抵抗が続いて久しいが、シリア政府は未だに何らの妥協も示す気配がない。それはアサド政権を支持する国民が、マジョリテイを占めているという認識があるからであろう。
先月2月27日に行われた憲法改正を巡る選挙では、57・4パーセントの投票率で、89・4パーセントの高支持率を得たことも、アサド政権を勇気づけたものと思われる。
しかし、他方では反政府の動きがますます活発になり、欧米やアラブのマスコミは、アサド体制のシリアの反体制は国民に対する対応は、虐殺行為だと激しく非難している。
欧米やアラブの国々はシリア政府を非難するだけではなく、反体制派に対し資金や武器の供与を、活発に行っているようだ。トルコはこれまで何度となく否定しているが、トルコ国境からも武器の密輸が、行われていることが推測されるし、レバノンからはすでにほぼ公然の秘密となっている。
武器や資金の支援をしているのは、サウジアラビアとカタールが挙げられているし、フランスやアメリカからも受けているようだ。フランスはシリアの旧宗主国ということもあり、ことさらにシリア問題への介入に真剣なのであろう。
意外なのはイスラエルの動きだ。イスラエルは1967年に起こった第三次中東戦争で、シリア領のゴラン高原を占領したままになっているが、このゴラン高原に隣接するクネイトラ市の住民に対して、携帯電話やSMSを配っているということだ。
そして、反政府のデモをけしかけていると言われている。結果的に、クネイトラ市およびその周辺でデモが活発化した場合、イスラエルは自国の安全確保と、シリア国民に対する人道支援を理由に、軍事介入(小規模な)を行うことができるということだ。
他方、イスラエルは将来起こるであろう、シリアのアラウイ派国民に対して、援助と保護の手を差し伸べる計画のようだ。イスラエルとシリアの国境地帯にテント村を建設し、そこにアラウイ派シリア国民を収用し、スンニー派の攻撃から守ってやるというのだ。
このいわばバッファー・ゾーン計画はトルコが検討したが、結果的に立ち消えになっている。トルコにしてみれば、そこまでシリア問題に深入りしたくはなかったのであろうか。
トルコはその代り、平和的なシリア問題の解決に努力している。ロシアやイランに対する説得工作がそれだ。その結果はまだ先であろう。