アリー・サーレハ大統領が、33年間に渡って支配してきたイエメンで、大きな変化が起こった。昨年に始まる反アリー・サーレハ大統領の国民運動は、アリー・サーレハ大統領がアメリカに治療に行ったことによって、新大統領選挙が可能となり、実施された。
結果は、明確にアリー・サーレハ大統領体制に、終焉を告げるものであり、同時に、アブドルラッブ・マスール・アルハーデイ氏が、新大統領に選出された。これでめでたしめでたしと言いたいが、どうもそうでもなさそうだ。
選挙の投票では、南部イエメンで反対行動が起こり、投票所の多くが途中で閉鎖したり、投票箱が持ち去られたりした。そのなかでは、怪我人や9人の死者も出ている。
今回の大統領選挙は、アリー・サーレハ大統領が国外に出たのを機会に、大急ぎで決定され、実施されたもののようだ。したがって、大統領立候補者は1人であり、イエメンの大統領選挙はアブドルラッブ・マスール・アルハーデイ氏に対する、信任投票のような形になった。
この新たな大統領が、実は問題がある人物のようだ。彼は南イエメンの軍学校を卒業し、軍人となったが、その後のイエメン統一の動きの中で、アリー・サーレハ大統領に取り上げられ、国防大臣に就任した後、副大統領に就任しているのだ。そのうえ、イエメンの与党の事務総長にもなっている。
つまり、バリバリのアリー・サーレハ大統領の、子飼いの人物だということだ。彼が新大統領に就任したということは、アリ-・サーレハ大統領の影響が、今後もイエメン政治に及ぶということであろう。
彼ばかりか、アリー・サーレハ大統領の子息や甥が、現在なおイエメンの軍や治安部分を、しっかりと握っているのだ。そうであるとすれば、新たに選出されたイエメンの大統領は、アリー・サーレハ前大統領の傀儡でしかない、ということではないのか。そうであることを分かっているからこそ、反アリー・サーレハ派は徹底的に、今回の選挙に反対したのであろう、
そこで気になるのは、これまでアリー・サーレハ前大統領を、全面的に支援してきたサウジアラビアが、今回の選挙でもアブドルラッブ・マスール・アルハーデイ氏支持に、回っていたようだ。そして、今回の選挙結果に、アメリカのオバマ大統領が、祝意を送っている。
つまり、イエメンの選挙はサウジアラビアとアメリカの影が、色濃く影響していたということであろう。そして、ムスリム同胞団もそれを支持していた、ということのようだ。