「温家宝首相シリアには関与せずと語る」

2012年2月15日

先に国連で開催された、シリアの内戦に対する対応をめぐって、中国とロシアはシリアに対する、制裁に賛成しなかった。それはそうであろう。社会主義国同士ということもあり、中国とシリアとの関係は良かったのだ。

 その後、EUの代表団が中国を訪問したが、当然のことながら、シリア問題が取り上げられたようだ。そのなかで中国の温家宝首相は、これまでとは少しニュアンスの異なる、発言をしている。

 それは、シリア問題で、中国がアサド体制を支援することはない、という新しい立場を匂わせたからだ。これはやはり大きな変化であろう。シリアにしてみれば、世界中から非難され、孤立しているなかで、中国やロシアがせめもの、救いだったからだ。

 もちろん、中国政府の重鎮である温家宝首相は、穏やかな内容で、立場の変更を伝えている。曰く『いま一番重要なことは、戦争やカオスを防ぐことです。そしてシリア国民が災難に遭遇しないことです。』

 中国にしてみれば、シリア問題は単に、中国とシリアだけの問題ではなかろう。イランとアメリカ・イスラエルが軍事的に、緊張しているなかで、ペルシャ湾の出口であるホルムズ海峡が、閉鎖されるようなことになったり、イランが軍事攻撃を受けることも、想定に入れておかなければならないだろう。

 そうなると、サウジアラビアからイラン分の石油を、買わなければならなくなるが、サウジアラビア政府は反アサドの立場にある。そうなると、アサド政権を明確に支持するということは、中国にとってアサウジアラビアとの関係上、決してよくはないだろう。あるいはそのことが、今回のような立場の変化を、中国政府に生ませたのかもしれない。

 国際政治はクモの巣のように入り組んでおり、エイヤッとばかりはいかない、ということであろう。