「アハマド・ネジャド大統領が議会で吊るし上げ」

2012年2月 8日

 以前からこの欄で書いてきたことだが、イランの権力内部で亀裂が、より鮮明になってきたようだ。これまでは、アハマド・ネジャド大統領に対する非難を、体制が弱体化する危険性があるとして、最高権力者のハメネイ師が抑えてきていた。

 しかし、今回は290人からなる議会議員のうちの、100人が署名することで、遂にアハマド・ネジャド大統領を査問に掛ける決定がなされた。アハマド・ネジャド大統領はこれらの議員から、議会で経済政策について、追及を受けることになるのだ。

 その裏には金融スキャンダル問題が、起こっていたこともあろう。アハマド・ネジャド大統領の親しい人物たちが、そのスキャンダルに連なっていたのだから、ある意味では仕方のないことであろう。

 いずれにしろ、今回のように議会議員の署名によって、体制内部からの突き上げで、イランの大統領が追及を受けるのは、1979年にイスラム体制が出来て以来、初めてのことだ。

 一部の情報筋は、今回の革命的な動きについて、アハマド・ネジャド大統領の権限を弱めることはあっても、彼を権力の座から引きずり降ろすことには、つながらないだろうと見ている。

 問題はこの後に続く、3月の実施される予定の、イランの議会選挙であろう。今回の査問の中で、アハマド・ネジャド大統領がきちんとした答弁ができなければ、政府は信用を失いかねない。

 アメリカを中心に西側諸国による、イランに対する経済制裁が、効果を出し始めてきており、それが庶民の生活を苦しくしてきていることは事実だ。イランの通貨はドルに対しても、ユーロに対しても大幅に下げているし、国際金融機関では、金が動かせなくなっているからだ。

 つい最近起こった現象では、インドからのコメの買い付けに対し、イランの業者が支払い不能に陥ったことだ。当然そうしたことは、諸物価の国内価格を押し上げることになろう。

 イラン政府は西側諸国の石油不買や、金融制裁は西側諸国を、最終的には苦しめるだけだ、と強気の発言をしているが、それはイランについても同じではないのか。ここで、イランが当面の問題をクリア出来、国内物価を安定させることができれば、問題はなかろうが、輸入上の問題から物価が値上がりするようなことになれば、たちまちにして大衆はアハマド・ネジャド体制に、反旗を翻すことになろう。

 アメリカのイランに対する、軍事攻撃の可能性が薄らいでいるなかで、他方、経済的締め付けは、効果を出しつつあるということであり、アメリカは戦わずして、イランを屈服させることができるかもしれない。