「自国に失望しトルコを理想国と思うアラブ人」

2012年2月 4日

 

 最近トルコが行った、中東諸国での世論調査の結果が出た。その調査内容は『トルコについて中東諸国の人たちが、どう思っているか?』ということだ。

 結果は、78パーセントの中東の人たちが、トルコについて、極めて好印象を持っていることが分かった。なかでも、トルコの政治手法を支持する人が、極めて多いという結果だった。

 この調査は、トルコ経済社会研究財団(TESEV)が行ったものであり、中東の16カ国、2323人を対称にしたものだった。昨年も同様の調査が行われたようだが、今年の結果は昨年同様に、トルコにとって極めて、好意的なものだったということだ。

 例外的に、トルコに対する印象が悪くなっている国は、シリアとイランであり、このことは最近のトルコ政府の、シリア内紛に対する厳しい対応を、反映したものと思われる。

 これとは逆に、トルコに好印象を持つ人たちが、安定的に多いのは、トルコのイスラエルに対する厳しい対応が、反映しているものと思われる。このため、中東諸国なかでもアラブの人たちは、トルコがパレスチナ問題に、もっと関与してくれることを期待する、と答えている。

 加えて、61パーセントの人たちが、トルコの政冶手法を、自国のモデルとしたい、と答えているということだ。これに反対し、トルコは自国政治のいいモデルとなり得ない、と答えた人たちが、22パーセントいたということだ。

 トルコの対する印象が極めていいのは、トルコ経済が極めて順調なことと、対外政策が一貫していることに、よるのではないか。

 他方、アラブの春を経験したアラブ諸国では、革命後の成果が、何一つ大衆の手に渡っていない。このことから来るフラストレーションが、ますますトルコを理想国家というイメージで、捉えさせているのかもしれない。

 しかし、一部のアラブ人インテリのなかには、トルコがかつてのオスマン帝国時代のように、自国を支配下に置くのではないか、という懸念を抱いている人たちもいる。

 だが、彼らの主張は極めて身勝手であり『トルコに指導されたくも、支配されたくも無いが、トルコにあらゆることで支援して欲しい。』というものだ。そのような甘えの構造が、アラブのインテリの間にある限り、アラブは独り立ちできないのかもしれない。

 革命が第一段階を過ぎた今こそ、インテリが率先して自国の将来像を、作っていかなければならないはずだ。そのことを怠って『アッラーが全ての問題を解決してくれる。』という神頼みが、ムスリム同胞団やサラフィ組織の選挙での、大勝利に繋がったのであろう。

 しかし、それはやり場の無い不満を、若者層に抱かせ、今回のポート・サイドのサッカー試合における、74人もの死者を出す大惨事を生み、続いてカイロでの暴動に繋がっているのではないか。エジプトについて言えば、状況は今後ますます、悪化していくものと思われる。それを止めうるのは、エジプトでは軍だけであろう。