革命が達成されたのは、昨年の1月25日だったが、以来1年間が経過した。そのなかで、ムスリム同胞団やサラフィ派は、次第に勢力を増している。先に行われた選挙では、ほぼ70パーセントがムスリム同胞団と、サラフィ派の手に議席が渡っている。
こうした状況を、革命の火付け役をし、しかも、犠牲者を大量に出した世俗派、なかでも若者層が黙っているわけがない。ついに世俗派若者によるムスリム同胞団に対する、反発の動きが始まった。
イスラム原理主義者が過半数となった、議会が開催され始めると、若者たちは議事堂へと集結し、反ムスリム同胞団の行動を起こした。この時、ムスリム同胞団は治安部隊に代わり、このデモを阻止した。
当然の帰結として、若者たちはムスリム同胞団に対する、非難を強めることとなった。彼らは『大衆はムスリム同胞団が失墜することを望んでいる』『ムスリム同胞団は革命を売った』などと叫んだ。
これ以外にも『革命は新たに始まる』『大衆よしっかりしろ』などと、いずれのシュプレヒコールも、ムスリム同胞団に対する非難だった。
ムスリム同胞団の結成した自由公正党は、新憲法で女性の服装に対して、規制をするつもりはないと語っているが、それは段階的な措置であって、最終的には、イスラムの法律に則ったものとなろうことは、誰にも想像がつこう。
現実に、ムスリム同胞団は憲法の基礎は、イスラム法(シャリーア)だ、と明言しているのだ。
エジプトのキリスト教徒であるコプト教徒に対しては、コプト教の法律で、裁くことを認めると語っている。そうなると、エジプトでは二つの法律が適用されることになるが、問題はないのだろうかと疑問が湧く。
エジプトのポートサイド市で開催されたサッカー試合で、アルマスリー・チームがアルアハリー・チームを破った後、観客同士が衝突し、73人(74人とも報じられている)の死者が出る、という大惨事になった。
エジプト国民の間では、サッカーは最も人気のあるスポーツで、過去にもエジプト人同士や、他のアラブとの試合で、暴力事件が発生し、死傷者を出したことが何度もある。
今回の場合は、そのことに加え、政治へのやり場のない不満が、サッカーの試合を通じて、暴発したのかもしれない。エジプトの革命はこれからだ、と捉えておくべきではないのか。