「ムスリム同胞団は大統領にA・ムーサ氏を推す」

2012年2月18日

 

 アラブの新聞が伝えるところによれば、エジプトのムスリム同胞団は次期大統領に、アムル・ムーサ氏を推薦するようだ。すでに、ムスリム同胞団はアムル・ムーサ氏に対して、打診を始めているようだ。

 ムスリム同胞団がアムル・ムーサ氏を、大統領に推薦しようと考えたのは、世俗派のエジプト国民からも、支持を受けることを、考えた結果ではないか。アムル・ムーサ氏は以前、ムバーラク大統領よりも国民に愛されていた。

そのことが、ムバーラク大統領に危機感を抱かせ、ムバーラク大統領はアムル・ムーサ氏を外相から外し、アラブ連盟の事務総長にしたという、噂が流れていたほどだ。

ムスリム同胞団はこのところ、軍最高評議会との良好な関係を、維持しようと努力している。エジプト国内が混乱したときに、一番頼れるのが軍だからであろう。同時に、アメリカ側からも軍との良好な関係を、維持するよう指図を受けているのではないか。

その軍最高評議会のトップであるタンターウイ国防相は、アムル・ムーサ氏とは旧知の仲であり、ムバーラク時代に一緒に仕事をしている関係だ。外交は軍事力を背景にしなければ、力を発揮できないのは、世界中何処も同じだ。

つまり、元外相のアムル・ムーサ氏とタンターウイ国防相は、これまでに何百回となく、意見交換をしてきた間柄だということだ。従って、アムル・ムーサ氏が大統領に就任することは、タンターウイ国防相も支持すると思われる。

現在のムスリム同胞団の力を考えると、アムル・ムーサ氏が大統領に就任すること、はほぼ確実なのではないか。それが一番妥当な大統領人事だと、私も思うのだが。

問題は、若手の世俗派がどう考えるかだ。現在でも、ムバーラク時代と同じ官僚たちが、エジプト政府の要職にあり、革命が達成されたにもかかわらず、なんら変わっていないというのが、最近の世俗派の判断だ。

今後、こうした不満を若手世俗派のメンバーが、どうエジプト国民をリードし、新しい政治機構を構築する方向にリードしていくのか。それが彼らには出来るのか。そのことが出来た場合、それでは新しく官僚に就任する人たちに、国家を運営していく能力があるのか。不安と難問が山積している

他方、ムスリム同胞団政府に対して、サウジアラビアやカタールはある程度の経済支援をするものと思われるが、それが何処まで大衆の生活向上に結びついていくのか、今の段階では判断が出来ない。これもまた不安だ。