ヨルダン政府はガス料金の値上げに続き、電気料金の値上げを検討している。その計画によれば、電気料金は9パーセント値上げされるようだ。9パーセントの値上げということは、ほぼ10パーセントであり、日本でもそんな値上げをしたら大騒ぎになろう。
ヨルダンは限られた数の富裕層と、もう一方にはパレスチナ難民を含む、多数の貧困層が居住しているのだ。彼らにとって、ガス料金の値上げの後の電気料金の値上げは、相当に家計に響くことは明らかだ。
ヨルダンでは発電の80パーセントのエネルギーが、ガスに頼っているが、そのガスは今までエジプトが供給してくれる、安価なものだった。しかし、昨年数カ月の間に起こった、10回以上ものガス・パイプライン爆破テロにより、エジプトのヨルダン向けガスは、何度となく停止している。
問題は、現在のヨルダン国内政治との絡みだ。ヨルダンは何度もお伝えしてきたように、国内は不安定であり、各派各層の国民が、政府に対する抗議デモを繰り返している。
最も用心深いムスリム同胞団ですら、最近では公然と政府批判を、行うようになってきている。そうしたなかで、ガス料金の値上げに続いて、電気料金の値上げが実施されるとなれば、反政府の動きはより活発なものとなることは、誰にも予想できよう。
サウジアラビア政府はアラブの春革命の動きのなかで、王制諸国を一つでも減らしたくないという立場から、ヨルダンとモロッコを湾岸諸国会議メンバーにするよう、働きかけてきている。
しかし、そうした動きよりも、サウジアラビアが取るべき手段は、ヨルダンに対するエネルギーの、無償供給ではないのか。カタールはガスの大生産国として、世界的に知られている.この国もアラブ・イスラム世界での、存在感を高めたいのであれば、ヨルダンに対して、ガスの供給を行った方が、いいのではないか。
こうした動きが湾岸諸国から起こってこないのは、あるいは第三国がそれを、阻んでいるのかもしれない。ハマースのトップがシリアのダマスカスから、ヨルダンのアンマンに移り住む方向で画策している。ハマースはアンマンに事務所を再開したい、とも伝えられている。
それはヨルダンの王制にとって朗報であろうか?あるいはその逆であろうか?おおよその見当は付きそうなものだ。