「弁護士ムバーラク大統領は無罪だ」

2012年1月24日

 エジプトのムバーラク大統領の弁護士は『ムバーラク大統領は無罪だ。」と言いだしている。その根拠は、元内務大臣などが治安に関係していた高官が、有罪となるのであれば、ムバーラク大統領には罪はない、ということのようだ。

 そればかりか、イスラエルに対するガス輸出での不正についても、それを進めていたのは、エジプトの情報部の幹部であり、ムバーラク大統領も彼の二人の子息も、関与していなかったと主張している。

 事実、ムバーラク大統領下で情報長官を務めており、その後副大統領に任命されたオマル・スレイマーン氏は、ムバーラク大統領のイスラエル向けガス輸出への関与はなかった、と証言している。

 こうしたことが弁護士によって主張される裏には、エジプト革命後の現状に対する不満が、国内に満ち溢れているということがあろう。世俗派の革命を起こした青年たちは、何時の間にかツンボ桟敷に置かれ、何の主導権も手に入れることはできなかった。

 選挙結果は、70パーセント近くをムスリム同胞団とサラフィ派が取り、エジプト議会はイスラム原理主義の方向に、どんどん向かっている。彼らは軍との関係維持を考えながら、動いているのだ。そこには、世俗派の台頭する幕は、ないようだ。

そもそも、現在軍最高評議会の幹部に収まっている人たちは、軍最高評議会のトップであるタンターウイ国防大臣をはじめとし、ムバーラク大統領によって昇格され、指名されてきた人たちだ。新たに結成されている政府にも、ムバーラク時代の政府高官が、多数連なって就任している。

 ムバーラク大統領は囚われの身ではあるが、特別待遇を受けており、いまだに政府高官に対し、モノが言える立場にいるのだ。食事は自分好みのレストランから取り、現政府の高官と何時でも電話で、連絡ができる状況にあるのだ。

 犠牲祭の折には、刑務所の外にいる元政府高官や現役の高官が、ムバーラク大統領に祝意を表すると同時に『もう少し我慢していてください、間もなく大統領の時代に戻ります。』と伝えたというのだ。

 ムバーラク大統領が無罪になるとは思えないが、彼が有罪になり、しかも処刑されるということは、ほとんどありえないのではないか。外部世界で(エジプト社会)いろいろなことが叫ばれているが、実際の状況はそれとは別だということであろうか。リビアでもカダフィ派がもり返してきているようだ。それは経済混乱が前体制の時よりも、悪化しているからであろう。