パレスチナでもアラブの春革命が起こりそうだ。ただし、これは選挙戦での話だが、どうやらマハムード・アッバース議長の率いるファタハは、イスマイル・ハニヤ氏が率いる、ハマースに敗北しそうだ。
このため、ファタハ幹部の間では、動揺が起こっている。元閣僚を務めたナビール・アムル氏は、緊急に選挙対策会議を開催すべきだと、マハムード・アッバース議長に進言したようだ。
ファタハの幹部にしてみれば、気が気ではあるまい。2006年の選挙でファタハはハマースに破れ、首相職をイスマイル・ハニヤ氏が担うことになったが、強引に彼を引きずり降ろし、ファタハの幹部を充てた。
誰が考えても、正統なやり方ではなかったのだが、マハムード・アッバース議長にしてみれば、アメリカとイスラエルの圧力の前に、そうせざるを得なかったのであろう。もちろん、彼自身の利害も大きく絡んでいた。
その後、マハムード・アッバース議長は、何の成果も無いイスラエルとの交渉を、繰り返してきたが、他方では、イスラエルの西岸地区への入植や、東エルサレムへの入植が、着々と進められてきていた。
マハムード・アッバース議長はパレスチナ大衆への手前、入植を凍結しないのであれば交渉に参加しないと、見得を切ってみたが、援助と絡んでいるだけに、遂にはアンマンでの交渉を受けてしまった。
このことは、ますますファタハとマハムード・アッバース議長の信用を、低下させることとなった。当然、それはマハムード・アッバース議長が唱えている、5月4日に予定されている選挙に、大きな影響を与えよう。
ファタハが不人気であることは、5月4日の選挙予想ばかりではなく、2006年の選挙以来続いているのだ。地方議会や職能組合の選挙で、ファタハはことごとくハマースの前に、敗北しているのだ。
それは、マハムード・アッバース議長の汚職、イスラエルとの交渉に挑む姿勢の不真面目さ、非民主的なベテラン重視の、ファタハ強いてはパレスチナ自治政府の運営などによろう。当然のこととして、ファタハ・メンバーの若者の間から、反発が生まれている。
ムハンマド・ダハラーン氏(元ガザの治安責任者)に対する対応も、厳しいものであったが、ファタハ・メンバーの若者層は、マハムード・アッバース議長よりも、ムハンマド・ダハラーン氏の方を、支持し信頼を寄せているのだ。
アラブの春革命が、北アフリカ諸国を襲っているとき、マハムード・アッバース議長は『パレスチナでもアラブの春が始まる、それはイスラエルに対する革命だ。』といったことを豪語していたが、パレスチナの場合も他のアラブと同様に、パレスチナの権力者に対する、反発の動きとなりそうだ。