「今度は王制諸国がきな臭いアラブの春」

2012年1月21日

 

 アラブの春革命がチュニジア、リビア、エジプトの独裁者を打倒し終わると、残るのはシリアとイエメンの独裁者、という構図になっていたのだが、どうもそれだけでは、収まりそうにない。

 どうやら、王制諸国でもアラブの春革命病が、蔓延し始め、次第に病状が深刻になりつつあるようだ。なかでも、バハレーンやヨルダンの状況は、深刻の度を増しているようだ。

 バハレーンでは軍や警察が、デモ隊に放つ催涙弾が原因で、死者が出ているし、拘束された人が拷問を受けて、死亡するというケースも出ている。そのため、抵抗運動はますます激しいものに、なりつつあるようだ。

 ヨルダンの抵抗運動は、イスラム原理主義者が主導権を握っており、王制打倒は口にしないまでも、次第にエスカレートしてきている。そこで気になるのは、イスラム原理主義者のほとんどが、パレスチナから移住して来て、ヨルダン国籍を手にした人たちだという点だ。

 ヨルダンのデモの特徴は、首相批判、政治改革が前面に出ている点だ。しかし、首相が交代しても限られた予算と、国王の絶対的権限の下では、改革にも限界があろう。

 それ以外にも、モロッコでは5人の大学卒業者が、仕事が無いことから悲観して、焼身自殺を図っている。この焼身自殺という抗議方法は、チュニジアのブ・アジジ青年の焼身自殺が、結果的に政権を打倒したことから、政権打倒に有効な抗議方法として、アラブ諸国に広がっている。エジプトでも同様の、焼身自殺未遂が起こっていた。

 日本にとってアラブの春革命で、一番気になるのは、サウジアラビアがどうなるかであろう。実はこの国でも、抗議内容が次第に激しいものに、なってきている。以前は、アルカテイーフのシーア派住民によるデモで、王制打倒は叫ばれていなかったのだが、最近では当然のように、王制打倒、サウド家をつぶせという声が、上がっているようだ。

 それは、政府のシーア派デモに対する対応が、厳しいことにより、双方の対立が激しいものに、なってきたからであろう。シーアは国民ばかりか、スンニー派国民の間でも、インテリを中心に、政府に対する抗議行動が起こっている。

 サウジアラビアの場合は、意外なことに貧困層が拡大していることや、失業問題が拡大していることによる部分もある。既得権を握っている人たちにとっては、サウジアラビアは金満国家であっても、後発組は厳しい環境に置かれているのだ。所得の格差が権力の不安定と、直結しているのだ。