イギリスのタイム・マガジンが、イランで過去2年間に渡って繰り返されてきた、科学者を狙った暗殺テロはイスラエルのモサドが行ったものだ、と断定する記事を掲載した。
その記事によると、イスラエルのモサドが訓練を施し、爆弾を与え、対価を払って犯行を行わせたというものだ。もちろん、犯行に直接関わったのは、イスラエルのモサド要員ではなく、イラン人であろう。あるいはイランのマイノリテイの、国民かもしれない。
イランで起こった科学者暗殺テロでは、いずれも磁石で爆弾を取り付け、相手を暗殺する、という手口であった。そして、殺害された犠牲者は、いずれも核開発に関わる、科学者たちであった。
いま、イランが進める核開発で、核兵器が最終的には作られ、その核兵器で攻撃されるという不安を、最も強く感じているのはイスラエルだ。そのために、イスラエルのモサドがイランの核開発を、遅らせるかだめにしてしまうために、こうした犯行に及んでいる、ということのようだ。
問題は何故この時期に、イギリスの権威あるタイム・マガジンが、イスラエルのモサドによる犯行だ、と断定したのかということだ。タイム・マガジンは情報源を、西側の情報機関としているが、それをいま流したということには、然るべき意味があってであろう。
現在、アメリカとイランとの間には、核開発をめぐり緊張関係はあるが、アメリカ政府が戦争を望んでいないということは、一般的に信じられている。そればかりか、アメリカはイスラエルが、アメリカを戦争に巻き込もうとしている、イスラエルが単独でイランとの戦争を始める、という不安を抱いてるということのようだ。
イギリスにしてみれば、イスラエルがイランを攻撃し、アメリカが戦争に巻き込まれれば、ペルシャ湾の出口のホルムズ海峡が、封鎖される可能性が高いことから、たとえ封鎖されなくとも、石油価格の高騰が起こり、ヨーロッパ諸国の経済は、壊滅的な打撃を受けることを、恐れてのことではないか。
アメリカとイラン、イスラエルとイランとの緊張関係が高まっているなかで、石油価格はいま100ドルを超える、高値で推移している。そうでなくとも、悪化の一途をたどるヨーロッパ諸国は、このためにますます経済が悪化していくことは確実だ。
イギリスがイスラエルの犯行説を断定したのには、イスラエルに対して戦争を始めるな、という明確な意思表示ではないのか。イランをめぐる状況は、そこまで緊張しているということだ。