世界のあちこちから、シリアのアサド体制は余命いくばくも無い、という情報が流れてきている。多分そうであろう。イスラエルは数週間もてばいいところだと、時間まで限ってこの情報を流している。
そこで、イスラエルがいま準備しておかなければならないことが二つある。第一に考えられるのは、自暴自棄になったシリアが最後の賭けとして、国外に敵を作るという方法だ。
つまり、国内の混乱を抑えるために、イスラエルとの戦争を始めるということだ。この手法は世界中の国々が、窮地に追い込まれると、採ってきた方法だ。しかし、今のシリアにはそれすらも、出来ないのではないか。
次に考えられるイスラエルが、準備しておかなければならないことは、シリアのアサド体制が崩壊した場合、大量のアラウイ教徒シリア人が、イスラエルに難民となって、亡命してくることだ。述べるまでも無く、シリアのアサド体制は、アラウイ教徒というイスラム教のマイノリテイが、中核をなしている。
従って、アラウイ教徒はスンニー派のシリア人からは、毛嫌いされており、情報機関や軍の幹部家族が、報復を受ける可能性は低くない。彼らが逃げられる唯一の隣国が、イスラエルなのだ。レバノンもイラクもヨルダンも、何処も彼らを歓迎はすまい。
そのため、イスラエル政府は既に、シリアのアラウイ教徒難民を受け入れる体制を、取り始めているようだ。アラウイ教徒難民を住ませるのは、イスラエルが占領しているシリア領のゴラン高原で、およそ45000人が流入して来ると予測しているようだ。
イスラエルはアラブのマイノリテイを受け入れ、それをアラブとの緊張で盾として使ってきている。例えばイスラエルで国籍を取得したドルーズ教徒(ゴラン高原に住んでいた人たちを中心に)を軍隊に入れ、パレスチナの取締りや戦闘に投入してきている。彼らはアラビア語が話せるので、極めて便利な存在となっている。
シリアのアラウイ教徒は、シリアの情報機関や、軍の幹部に多かったことから、イスラエルが彼らを受け入れることは、今後のアラブ対応の上で、極めて好都合であろう。彼らはシリアの軍事情報、兵器装備状況、軍事技術、作戦立案について、知っているばかりか、他のアラブの国々の軍事情報も、持っていよう。
私が考える程度のことは、イスラエルも考えていよう。イスラエルは常に不利な状況を、逆に利用して優位に立とう、と考えているということだ。アラブ諸国はシリアのアサド体制が崩壊することにより、イスラエルとの関係上、極めて不利な状況に追い込まれる、ということでもあるのだ。