「エジプト政府外国資金を受ける団体取り調べ開始」

2012年1月 5日

 エジプト政府は外国から資金を受けている、各種団体の調査を始めた。これは欧米だけではなく、アラブ諸国からの支援も含まれる。

 このエジプト政府の措置は、ある意味で当然であろう。アラブの春革命なるものが、実は外国、なかでも欧米諸国の資金と支援を受けて、成功した経緯を見た場合そのことが分ろう。

 アラブの春革命後も、それらの国々で選挙が行われ、イスラム原理主義を唱える組織が、多くの当選者を出している。例えば、エジプトの場合はムスリム同胞団やサラフィ派の政党が、7割近い議席を獲得するに至っている。

 選挙の結果、イスラム原理主義組織が多くの当選者を出した裏には、これらの組織は長い歴史を持っていることと、組織内部が固まっており、社会に広く根を張っているからだと言えよう。そのことに加え、莫大な選挙資金が湾岸諸国などから、届いていたのではないかと思われる。

 もちろん、選挙に立候補者を出した組織ばかりではない。民主化を進める社会運動組織なども、調査の対象とされているようだ。加えて、エジプト国内で活動している、外国の組織についても、エジプト政府はメスを入れるようだ。

 エジプト政府は正当に政府の許可を得ている組織については、調査の対象外としているが、今後どうなっていくかわからない、というのが実情だ。

 もう一つ考えられることは、今回の各組織への立ち入り調査は、台頭し過ぎたイスラム原理主義組織に対する、間接的な圧力ではないかということだ。以前から述べてきたように、軍は極めて合理的な考えをする組織であり、世俗的組織でもある。 

その軍が現在の段階では、エジプトの最高権力の座に就いているわけだが、今回の選挙結果を認め、ムスリム同胞団がエジプトの与党になることを、認めるのだろうかという、疑問を私は抱いている。

エジプト政府が各組織の外国からの資金援助について、調査を開始したということは、あるいは新段階にエジプトの政治が、動き始めたのかもしれない。ムバーラク大統領の時代に、サアードデーン・イブラーヒーム教授が主宰していた社会改革団体は、外国から資金援助を受けているということで、取り調べられ、結果的に活動を止めさせられている

アラブの春革命が起こった後のいまでも、もし、特定の組織が外国から援助を受け、エジプトの政治を変えようとしているということになれば、国民の多くは取り締まることを、支持するものと思われる