「2012年混乱の度を増すアラブ諸国」

2012年1月 3日

 

 日本の景気があまり芳しくないといっても、他国に比べれば日本は大分ましなのだろう。欧米諸国の経済は崩壊寸前の状態にあり、国家そのものが破産する可能性のある国は、幾つもあるようだ。

 その欧米との貿易や観光収入、財政支援を受けて成り立っていたアラブの国々は、もっと酷い状態にあるようだ。それが革命騒ぎでますます酷い状態に陥っており、誰もどうしたらいいのか分からない、というのが実態であろう。

 アラブの春革命の先陣を切ったチュニジアは、早々と選挙を実施し、新たな内閣が誕生しているが、この国はさしたる資源も無く、外国依存の体質にある。リビアとの関係が最も大きな、経済的要素の一つであることから、マルズーキ大統領がリビアの首都トリポリを訪問し、臨時政府代表のアブドッジャリール氏やアブドルラテイーフ首相と、経済関係の強化を討議している。

しかし、リビアそのものがいまだに不安定な状態にあり、この訪問の効果が早い時期に出ることは、ほとんど期待できまい。チュニジアはここ当分の間、経済苦で国民が苦しむ状態が続くだろう。

チュニジアに次いで、アラブの春革命に成功したエジプトでは、唯一の頼みである軍に対し、改革派が反旗を翻し始めている。それをアメリカなどの外国勢力が、支援する形になっているが、もし、軍が責任ある立場から退いた場合、一体誰がこの国をまとめていけるのであろうか。

イスラム原理主義のムスリム同胞団やサラフィ派の人たちは『イスラムが問題を解決できる。』というだろうが、イスラムでは問題は解決出来まい。イスラム教の教えでは、『自身が努力する者をアッラーは支援する、』とあるのだから。

エジプトで軍が政治的責任ある立場から離れた場合、軍は自分たちの権益だけを守ることになろうから、国民は埒外に置かれることになろうし、国防についても同様であろう。

そうしたエジプトの将来の混乱をほくそ笑むのは、イスラエルではないのか。エジプト軍が軍の主要義務である国防を放棄し、自分たちの利益だけを守るようなことになれば、アラブ諸国は全く丸裸の状態に、なるのと同じであろう。エジプト軍の存在はそれだけ、アラブ諸国全体の安全上重要なのだ。アラブ諸国の混乱はここからも予測される。

エジプトに次いで革命に成功したリビアでも、国内状況は悪化の一途だ。イギリスやフランス、アメリカが戦争に投入した代金の徴収を、既に始めていよう。あらゆるリビアの権益は、実質的にはこれら3カ国の手中に、収まったも同然であろう。その結果、リビア国民の生活はカダフィ時代よりも、悪化することは歴然であろう。

いま革命の途上にあるシリアやイエメンやバハレーン、そして、その次に革命が予測されるヨルダンなどでも、状況は同じではないのか。こうした流れのなかで、ムスリム同胞団の地位が急速に向上し、各国で大きな影響力を持ちつつある。彼らには国家を運営する、能力があるのだろうか。

外国の宣伝や介入、国内の無責任な勢力の台頭を許せば、アラブ諸国はますます混迷の度を増そう。それはアラブだけではなく、日本でも欧米でも同じことが言えよう。いま必要なのは、大衆が冷静な目でモノを見、考え、行動することだ。軽挙妄動は何も生み出さないばかりではなく、状況をさらに悪化させることに繋がろう。2012年はまさに国民の英知が、問われる年であろう。