「ヨルダン政府はムスリム同胞団締め付けに動くのか」

2011年12月29日

 ヨルダン政府は慈善団体ICS(イスラム慈善団体)のメンバーを増やし、特定の団体が牛耳ることを避ける、動きが始まっている。この動きは、いままでこのイスラム慈善団体を牛耳ってきた、ムスリム同胞団を団体の中枢から、締め出すことが、目的ではないかと思われる。

 イスラム慈善団体は各地で活動をしており、その結果として、地域住民をひきつけ、支持者にする効果を持っている。つまり、イスラム慈善団体を牛耳ることは、社会的影響力をその組織が、手に入れるということだ。

なかでも都市部の貧困層は、この慈善団体の援助に依存していることから、主導権を握っている組織への、支持が強まるのは当然であろう。最近このイスラム慈善団体の議長に、アブドルラテイーフ・アルアラビーヤ氏が、政府によって指名されたようだが、彼はムスリム同胞団のメンバーではない。

 このイスラム慈善団体の、構成委員数が増加したことで、ムスリム同胞団は主導権を、握れなくなるだろうとみられている。この新しいヨルダン政府の方針に対し、ムスリム同胞団は対抗策を、取れない状態にあるようだ。

 イスラム慈善団体の構成委員数が増えたことで、ヨルダン政府はこの組織を、動かしやすくなったということだ。

 ヨルダン政府がこうした動きに出たのは、ヨルダンの反政府運動が、ムスリム同胞団の主導で、動き出したことに起因しよう。これまでは世俗派、イスラム団体など、各種の組織が横並びになっていたが、そのなかで一定の盛り上がりを見せた運動に対し、ムスリム同胞団が明確に主導する姿勢を、示すようになっていたからだ。

 チュニジアでもムスリム同胞団に関係する、ナハダ党が主導権を握り、エジプトでもムスリム同胞団が主導権を握る段階に入っている。リビアでもシリアでも、ムスリム同胞団の主導的役割と、存在が目立っている。パレスチナでもムスリム同胞団の下部組織である、ハマースが大きく躍進している。

 そうした他のアラブ諸国の状況を判断し、ヨルダン政府は慈善団体を通じて、大衆の支持を強めているムスリム同胞団の行動を、規制しようとしているのであろう。

 これは賢明な対応策であろうが、同時に、ムスリム同胞団が政府に対して、牙をむき出しにする、原因にもなりかねない。ヨルダン政府はそのことを、十分に考慮したうえで、今回の決定を下したと思われる。そうである事を望む。