アラブの春革命で、エジプトの第一党に躍進したムスリム同胞団は、自信を付けたのか派手な動きが、目立ってきている。そのことに励まされたのか、パレスチナのハマース(ムスリム同胞団が母体の組織)や、シリアのムスリム同胞団の動きも、活発になってきている。
そうしたなかで、カイロを舞台にファタハとハマースの交渉が行われ、ハマースはPLOのメンバー組織に、加わることが決められた。それはPLO、強いてはパレスチナ自治政府にとって、一大転換を意味する動きだ。
ハマースはイスラエルの国家の存在を認めず、パレスチナの領土はイスラエルを含む、全てのパレスチナの土地だ、と主張してきていた。したがって、その主張を崩さないハマースと、ファタハ、パレスチナ自治政府が一体となるということは、イスラエルを全面否定し、これまでイスラエルとPLOあるいはパレスチナ自治政府との間で交わされた合意も、反故にされる危険性を、多分に含んでいることを意味している。
ハマースは優位に立って、PLOとの交渉を行ったことに、自信を得たのであろう。ハマースのハニヤ首相が初めてアラブ各国を、歴訪することになった。もちろん、そこではこれまでのハマースの主張が繰り返され、パレスチナ闘争はパレスチナ全土の解放、という基本姿勢を捨てるべきではない、と語るのであろう。
このことに一番不安を感じているのは、イスラエル政府でありマハムード・アッバース・パレスチナ自治政府議長であろう。いまの勢いで行けば、PLOに参加したハマースは、自治政府議長選挙で勝利すること、議会議員選挙で多数派になることも、十分予測できるからだ。
ハマースがパレスチナ議会の過半数を占め、もし自治政府議長の座に就いた場合、これまでのパレスチナ自治政府幹部や、PLO幹部の汚職は全てが、明らかにされる可能性があろう。そうなれば他のアラブで起こったように、マハムード。アッバース議長を絞首刑にすべきだ、という意見も出てこよう。
マハムード・アッバース議長は『パレスチナにもアラブの春革命が起こる。それはイスラエルに対する抵抗運動だ。』と主張していたが、そうではあるまい。その前にパレスチナ内部で、アラブの春革命が起こる危険性の方が、イスラエルに対して起こるよりも、高いのではないのか。
エジプトのムスリム同胞団の花形学者ユーセフ・カルダーウイ師は、エジプトだけでは物足りないのか、リビアに行って説教をしている。いまアラブ世界では、ムスリム同胞団ブームのような現象が起きているが、それが大衆の求める結果を出すのであろうか。大きな疑問符が私の目の前では、ちらつくのだが。