イランとアラビア半島の東北端にあるアラブ首長国連邦とは、最狭部で54キロメートルしか離れていない。言ってみれば、この二つの国は別国でありながら、お互いに生かし生かされてきた関係にある国だ。
イランからは野菜や果物を始め、軽工業製品やじゅうたんがアラブ首長国連邦に持ち込まれ、アラブ首長国連邦からは乗用車や工業製品、ぜいたく品などがイラン側に届けられていた。
イランの首都テヘランに滞在した折、この国の代表的なホテルに宿泊したのだが、そのホテルの地下に貴金属店があった。ダイヤのアクセサリーや金製品その他、骨董や色石のアクセサリーが売られていた
他の国と比べて安いので、有り金全部使い果たして買い物をしたのだが、店主はまだ勧める。現金が無いとこちらが答えたときに、意外な答えが返ってきた。カード支払いで結構だというのだ。
そこでどうしてそれが可能なのかと質すと、店主はドバイの銀行と取引があるから問題ないというのだ。もちろん、イラン政府はカードでの決済を認めていないので、その店は何か政府の高官と特別な関係にあり、お目こぼしされているのだろうと考えた。
ドバイを訪問した時には、イラン人の金融関係者や不動産関係者が、多くの不動産を売買しているという話も聞いた。つまり、イランにしてみればドバイは自分の国の、出島のような関係にあるということであろうし、アラブ首長国連邦側からすれば、商売に長けたイラン人が自国で取引をしてくれるのは、経済活性化の上でプラスと考えているのであろう。
ところがここにきて、イランとアラブ首長国連邦双方が、貿易業務を一時的であろうが、停止する形になっている。政府の機関がそれを認めなくなっているのだ。イラン側の説明ではコンピューターがダウンして機能していないという説明であり、それ以上の説明はなされていない。
この説明はもちろん嘘であろう。アラブ首長国連邦がアメリカの強い圧力に屈し、貿易業務を一時的に停止したのに対し、イラン側も同じ措置を取っているのであろう。コンピューターの故障ということであれば、お互いに傷がつかなくて済むからだ。
しかし、それが長期化すればイランにもアラブ首長国連邦にも、影響が出てこよう。アメリカのように追い込むことが、イランを懲らしめるうえで正解なのか、あるいは太陽と風ではないが、太陽を照らしてやる方がいいのか。対応は二通りあるが、それを決めるのは国民性であろうか。