「エジプト第二回選挙結果はイスラムの圧倒的勝利だが」

2011年12月21日

 エジプトの革命後選挙が行われているが、その結果は第一回に続き、第二回選挙もイスラム政党の、圧倒的勝利になりそうだ。

 第二回投票の中間発表によれば、ムスリム同胞団の自由公正党は39パーセント、サラフィ主義者のヌール党が31パーセントを獲得し、世俗派では唯一ワフド党が22パーセントを勝ち得たようだ。

 つまり、ムスリム同胞団とサラフィ派の獲得票数は、全体の70パーセントに達することになる。これでは世俗派がどうあがいても、議会で発言力を持つようになるとは思えない。

 そこで世俗派が議会で発言権を持てるようになるには、軍との協力しかないいのだろうが、どうもそれもうまく行っていないようだ。

連日続いている軍の支配に対する抗議デモは、軍から民間への権力の移行を急げと主張しているが、その後に来るのは、世俗派の時代ではなく、イスラム主義者たちの時代だ、ということが分かっていないのであろうか。

不思議に思えてならないのは、今回の第二回投票では、投票率が60パーセントを超えていたわけであり、それでもイスラム主義者たちの政党が、圧倒的な勝利を収めたということは、たとえ投票率が100パーセントであっても、世俗派がイスラム主義者たちに勝ることは、無かったということだ。

そうした状況がエジプトで出て来るには、彼らの逃げの思想があるからではないか。苦しい時の神頼みならぬ、アッラー頼りなのであろうか。イスラム主義者たちは『イスラムが全ての問題を解決する』と主張してきたが、今回の選挙ではその言葉は表面に出なかった。

しかし、国民の間にはますます悪化する失業や物価上昇問題に対し、その問題を解決するには、アッラーに頼るしかないという、他力本願的な考えが、優先したのであろうか。

既に何度かこの欄で書いてきたように、革命は前政権を打倒して終わりではないし、その結果、自分の権利が拡大し、取り分が増えるわけではない。革命は第二段階、第三段階と進められて行って、初めて革命の勝利者たちに、その配当がめぐってくるのだ。

エジプトを暴力のるつぼに追い込み、公共建物を破壊し、国家の貴重な財産を燃やしてしまったのでは、将来、革命の成功によって得られるべき果実も、手にすることはできまい。

今回のデモで、国立国会図書館に収蔵されていた、歴史的に貴重な地図や書籍が、相当焼けてしまったようだ。イスラム政党が与党になった時、それが復元するとは思えない。惜しいことをしたものだ。