「少しずつ変化し始めたイランのシリア発言」

2011年12月15日

 シリアはイランにとって、中東のなかで最も重要な友好国であろう。イラクがシーア派政権になったいまシリアと繋がり、レバノンのヘズブラと連携し、パレスチナのハマースを抱き込むと、アラビア半島はイランによって、包囲されたも同然になるからだ。

 従って今まで、世界的な非難がシリアに向けられていても、イランは完全にシリア擁護の立場に立ち、その姿勢を変えないできていた。しかし、ここにきて、さすがに5000人のシリア国民が殺されたとあっては、放置できなくなったのであろう。

 あるいは、シリアのバッシャール・アサド政権が間も無く崩壊する、と読んでいるのかも知れない。いずれにしろイランの政府高官(フセイン・アミール・アブドルラヒヤーン外務次官)が、微妙な発言をし始めたということは、イラン政府内部にシリアに対する対応を変える考えが、浮かび始めているのではないか。

 つい最近、イランの政府高官(フセイン・アミール・アブドルラヒヤーン外務次官)が『シリアの体制に圧力を加えるつもりは無いが、シリア国民を殺すことについては賛成しかねる。』と語っているのだ。立場上、シリアの体制擁護の立場を示しながら、イランはシリア政府が国民を殺すことには反対だという形で、シリア体制のデモ対応を非難したのだ。

 これまでは、外部勢力やテロリストによって狙撃が行われ、デモ隊の側にもシリア軍の側にも犠牲が出ている、というものだっただけに、微妙ではあるが変化の兆しが、見えたということであろう。

 加えて、シリア人アラウイ派政治家の間からも、体制に対する批判の声が、聞こえ始めている。彼はシリア国内に居住しておりシリアの国会議員になっている人物だ。彼は暴力による対応は暴力を生むだけだと語っている。

 シリアの状況に対し、欧米諸国はリビアとは違って、いまだに腰を上げていない。それはシリアにはエネルギー資源が無いからなのだ、といわれている。シリアにある石油資源は極少量であり、欧米諸国がよってたかって体制を潰してまで、手にするほどの価値は無いとうことであろう。

 しかし、ここにきて欧米諸国はシリアを放置すべきか否かを、真剣に検討し始めているようだ。資源の略奪もさることながら、人道的に放置できる限界を超えたということであろうか。

 シリアは資源貧国とはいえ、いまだに探査されていない部分や、シリアが欧米に敵対的であるということから、資源開発が放置されていた可能性もある。そのことに加え、イランやイラクの石油ガス資源の、地中海側へ搬出のルートとしては、シリアの地理的条件は素晴らしいものなのだ。

そう考えると、欧米が重い腰を上げることも、ありうるのではないか。その後を考えて、イランが立場を少しずつ、変更し始めているのかもしれない。