『アラブの春』の影響であろうか、3つのアラブ王制諸国で、不安な状況が発生している。それが今後拡大していくのか、政府が賢明な対応をすることで、拡大を避けられるのか不明だ。
第一の国は、世界最大の石油埋蔵量を持つサウジアラビアだ。この国でも金曜礼拝の後、モスクに留まる形の政府に抗議する行動が、全国的に始まっている。これはなかなか取締りが困難であろう。
それは、ムスリムがモスクに留まることは、なんら問題が無い行動だからだ。しかし、政治的な意図を持って留まられた場合は、話は違ってくる。現段階では警察や軍人が、モスクを遠巻きにして監視するに、留まっているようだ。
サウジアラビアではシーア派が集中する、アルカテイーフ地域で以前から政府に抗議するデモが起こっていたし、都市部ではインテリによるデモが行われ、女性による運転許可要求の、実力行使も起こっていた。
次いで、ヨルダンでも政府に対する抗議デモが、次第に拡大している。しかも、最近では全国規模に、抗議デモが拡大しているようだ。マフラク市ではバニー・ハサン部族が警察と衝突し、双方に負傷者が多数出たということだ。このバニー・ハサン部族はヨルダン国内で、最大の部族の一つであり、その部族が動き出したということは、要注意ということであろう。
ヨルダンのデモの一般的要求は、首相の国民による直接投票による選出の実現と、経済改革のようだ。そのことは、間接的にアブドッラー二世国王の、権限縮小を要求しているということであろう。
最後はクウエイトだ。クウエイトでは以前から何度も問題化した、ビドーンに対する処遇問題が、今後拡大して行きそうだ。ビドーンとは国籍を与えられないままに、クウエイトに50年以上も、居住している人たちのことだ。
ビドーンとは無国籍者を意味する、アラビア語の呼称だ。彼らはクウエイトに105000人居住しているが、そのうちの34000人に対しては、国籍を与えられる方向で、クウエイト政府が検討を始めている。
しかし、残りの71000人については、元々何処の国の出身者なのかが、証明されることが条件とされている。しかも、それが証明されたから国籍が与えられる、ということではなさそうだ。
クウエイト政府の説明によれば、ビドーンは周辺諸国から移住してきた人たちであり、国籍を付与する必要が無い、ということのようだ。クウエイト政府は彼らに対し、出生証明も死亡証明書も出していないし、もちろんクウエイト国籍のパスポートも支給していない。ビドーンの給与はクウエイト国民に比べ、大幅に安いし、クウエイト国民が享受している、各種の特典も与えられていないのだ。
最近では、このビドーンの権利要求行動に対し、人権委員会や活動家が参加し始めている。去る金曜日には、ジャフラ市の金曜礼拝の後、抗議デモが断行された。
サウジアラビアにしろ、ヨルダンにしろ、クウエイトにしろ、反政府行動の原因は異なるとしても、今後、拡大していく可能性は否定できない。政府は早急に対応策を、講ずるべきであろう。他の国の例を見ると、政府に対する要求デモが拒否された結果、抗議行動は激しさを増し、最終的には国家元首の追放や、処刑が叫ばれるようになっている。その現実を無視するべきでは無い、ということだ。