「アラブの春の後はイスラム原理主義の嵐」

2011年11月29日

 

 『アラブの春』あるいは『ジャスミン革命』と美しい名前が付けられた、一連のアラブの革命騒ぎは、いままでのところ、何もいい結果を生み出していないのではないか。

 それどころか、アラブの春の後の、アラブ諸国の状況は日に日に、厳しさを増していると言えそうだ。失業が増大し、犯罪が増え危険で日々の生活さえも大変な状態に、なっているのではないか。

 エジプトの選挙では、ムスリム同胞団が、組織力に物を言わせて優位を保っており、やがて選挙結果が出たときには、与党におさまっている可能性が高い。そのムスリム同胞団は『ユダヤ人は皆殺しにしろ。』と叫んでいるということだ。

 リビアのイスラム原理主義者の代表格であるベルハッジ氏は、トルコでシリアの反体制派に会い、資金と武器の供与を申し出ている。シリアの反体制派の中心が、ムスリム同胞団であることが、その一因ではないかと思われる。

 リビアでは国法を『イスラム教のシャリーア法(イスラム法)にするべきだ。』とイスラム原理主義者が主張し、それに反対する政治指導者たちは、暗殺の脅しを受けているとも、伝えられている。

 チュニジアではサラフィスト(イスラム原理主義者)が、大学での男女共学を、禁止する方向で動き出している。彼らはアフガニスタン人の服装をして、示威行動をしているとも、伝えられている。

 シリア、バハレーン、ヨルダンの場合はどうなのであろうか。これらの国々でも、もし革命が成功した場合、チュニジアやリビア、エジプトと同じように、イスラム原理主義者が幅を利かせ、イスラム色を強めていくのであろうか。

 シリアの場合は影の革命の主役は、ムスリム同胞団であり、その可能性は否定できない。ヨルダンの場合も、反政府勢力で最も優位に立っているのは、ムスリム同胞団だ。したがって、イスラム色を強めていく可能性が、極めて高いといえよう。

 バハレーンはシーア派が、反政府運動を展開しており、しかも、イランに近いことから、相当の影響を受けると、予想すべきであろう。

 こうなると、アラブ世界では革命が拡大して行き、その結果として革命政府が誕生すると、イスラム原理主義の色合いが濃くなっていくと考えられるが、果してそのとおりになり、それが定着していくのかというと、そうではないだろうと私は考えている。

 やがてイスラム原理主義者たちの主張に対する、反発が起こるだろうと思う。そもそも、今回の一連の革命は、世俗主義者の若者たちによって、始められているのではないのか。であるとすれば、彼らのイスラム原理主義者に対する、反発が必ず生まれてくるということになろう。