カダフィ大佐が殺害され、後継者と目されていた次男のサイフルイスラームが逮捕されたことで、リビアの革命が達成されたということになっている。
しかし、それはあくまでも前体制が崩壊したということであって、革命はその途上にあると言えるのではないか。今後予測される問題は、各部族のエゴの対立が激化することであり、国民の生活をどこまで革命以前の状態に、復旧できるかということであろう。
既に部族のエゴは顕在化し、彼らはそれぞれ自部族の立場を守るために、政府が呼び掛けている武装解除を、受け入れようとはしていない。それどころか、各々が隠匿されていた武器探しをし、武装強化を図っている。
そうしたなかで起こっている、もう一つの現象は、かつてカダフィ体制に近かったことが、新体制になって部族にとり、不利に働いているというケースだ。たとえば最近、その不満を言い始めた部族に、ベルベル族のアマジグ部族がいる。
アマジグ部族はカダフィ体制に近かったことから、今回の組閣で一人の閣僚も選出されなかった。述べるまでもなく、閣僚のポジションを得ることは、その部族にとって、経済的なメリットがあるのだ。
アマジグ部族の代表者はカダフィ体制に近かったが、最初に反旗を翻したのも我々だったと主張している。ベルベル族はリビア人口の約10パーセントといわれるだけに、彼らの主張を無視することは危険であろう。
このアマジグ部族はイスラム教がリビアに入ってくる前の頃から、リビアに居住していた部族で、トリポリの西120キロの地域や、アルジェリアの国境に近いガッダーミス、リビアの北西部ズワーラのナフサ山の周辺に、居住している部族だ。
こうした動き以外にも、政権中枢に近い人物の間にすら、将来に対する不安があるようだ。かつて首相候補と言われていたジブリール氏は、暗殺を恐れて辞退したと言われているし、アルフーニ氏も暫定の石油相職にあったが、新政府の危険性を感じて辞退している。
そればかりか、彼は新政府が欧米から武器、資金援助を受けている傀儡政府だとさえ批判しているのだ。
リビアは今後、こうした部族間対立に加え、民生の回復をめぐり、不満が噴出してくるのではないか。それを欧米は力で押さえつけ、新体制なるものを支持支援していくであろうが、それは容易なことではあるまい。