極めて短期間にチュニジア、エジプト、リビアでは革命が成功し、国家元首がその座を追われた。しかし、勘違いをしてはならないのは、これで革命が終わったのではないということだ。
国民が自由を手にしたなかで新議会議員が選出され、内閣が結成され、革命後の国家運営が始まるのだ。これが革命の第2段階であり、その次には、経済を中心とした国家の立て直しという、第3段階が待ち受けているのだ。
だが国民のほとんどは、革命で旧体制が打倒された瞬間に、革命が終わったと勘違いしている。そして、革命をやったのは我々だから、権利を拡大できる、と考えてしまっている。
仕事が自動的に創出され、給料が倍増し、あらゆることを自由に行うことができる、と勘違いしているのだ。つまり、革命の主体となった若者たちには、革命の何たるかが分かっていないのだ。
エジプトではいま、イスラム原理主義組織と革命の担い手となった世俗派の若者たち、そして保守世俗派の中年組など、幾つものグループが誕生し、各々に権利を主張しあっている。
こうした状況では、革命第2段階はなかなか前進しないし、革命第3段階は望むべくもないだろう。
この革命第2段階から第3段階、そして第4段階へと移行するなかで、エジプトの場合ラッキーだったのは、しっかりした軍が存在したことだ。国民は勝手なことを言って騒いではいるが、最終的には軍がそれをコントロールしてくれるのだ、という安心感があるのではなかろうか。
エジプトの場合、加えてラッキーなことは、軍のトップがこれまでとは違って、大統領に就任する意欲を持っていないことだ。もちろん、軍幹部のなかには、軍から新大統領を出すべきだ、という声が大きいということもあるが、タンターウイ国防大臣本人は、そうは希望していない。
国民が革命の夢から覚めて現実を直視し、国家の再建に向かわなければならない時期は、すでにスタートしているのだ。
エジプトの国民が、もしそのことに何時までも気づかずに、駄々子のようなことを言っていたのでは、ムバーラク大統領の復権という(?)、考えられないような事態が、生まれるかもしれない。
先のイスラムの犠牲祭の時には、ムバーラク大統領本人も、カーキ色のスーツを新調し、ダチョウの肉のステーキを所望したというのだ。
そして、沢山のお祝い電話がムバーラク大統領に、かかってきたというのだ。その電話の主の一人は『大統領閣下、間もなく問題は解決します、われわれの与党が選挙で勝利しますから。』と語ったというのだ。