シリア国内で反体制運動が始まってから、既に長い時間が経過している。しかし、他のアラブで起こった革命をとは異なり、シリアの革命運動はなかなか、進展を見なかった。
それについては、いろいろな説が流れた。『シリアには地下資源が無いので欧米は関心を持っていない。』『シリアはイスラエルとの間に、実質的な不戦関係にあるため、独裁でも放置した方がいい、と欧米諸国が考え介入しない。』といった意見がその中心だ。
しかし、そうだろうか?ではエジプトの革命は何故成功したのか、チュニジアの革命も何故成功したのか、という疑問が沸くだろう。両国は共に特別に、地下資源に恵まれた国ではない。エジプトの場合はシナイ半島にガスがあるが、それほどの量ではあるまい。
シリアの革命が大きな進展を、今日まで生まなかったのは、シリア国民が賢いからであろう。『レバ・シリ商人』という言葉があり、以前からレバノン人シリア人は賢く、商売に長けていると言われてきている。
つまり、反体制運動を起こしても、あまり得にはならない、と考えるシリア国民が多かったのではないか。また、彼らのほとんどは、個人的にリスクを負いたくない、とも考えているのであろう。
軍人の多くがスンニー派であるにも関わらず、10パーセント程度のアラウイ派が、この国の権力を握って、既に40年ほどの時間が、経過しているのだ。そのことは、軍人もやはり賢いシリア人だ、ということではないのか。
こうした事情から、誰も本気で自己犠牲を払って、シリアの革命を成功させることは無いのではないか、という懸念があったが、ここにきて急に動きが、活発になってきたようだ。
副大統領だったハダーム氏が、明確に反体制の立場を表明し、軍人が離反し始めたからだ。そうしたなかで、新たな動きがあった。それは軍の基地が襲撃されるという、出来事が起こったことだった。しかも、首都ダマスカス市に近い基地が、襲撃されたのだ。
このことは、軍の基地に襲撃をかけられるだけの、まとまった武装組織が誕生した(自由シリア軍)、ということであり、彼らは然るべきレベルの武器を、所持しているということだ。
もう一つの新たな動きがあった。それはトルコがシリアに対して、電力の供給を止める、と言い出したのだ。シリアにも発電所はあるが、シリア北部はトルコの電力に依存していることから、この電力供給カットは、大きな痛手となることであろう。
電力は生活上使用されるが、それ以上に工業用にも使われていることであり、これはシリア産業にも少なからぬ悪影響を、及ぼすということであろう。アラブ連盟によるシリア・ボイコットと合わせ、トルコの電力供給カットの動きは、シリア政府を遂に最終段階に追い込んだのではないか。