ヨルダンのデモがこれからますます大きくなっていき、ヨルダンも危険な状態になっていくのではないかと懸念されていたが、最近は大分沈静化したと思っていた。サウジアラビアの資金援助が、何とかヨルダンの大衆蜂起を、抑え込めたのかと思えた。
そもそも、現在アラブ世界で起こっている大衆蜂起は、伝染病のようなものだということは、大分前から指摘してきた。従ってアラブのどの国にも、一定の影響が出るだろうと考えていた。
伝染病には薬が効く。この場合の薬は資金であり、大衆の要望に資金を使って応えることが、病気の悪化をある程度防ぐことが出来るだろう。そのためにサウジアラビアは、ヨルダンに対して相当額の援助をしている。
しかし、ヨルダンの国民が求めるのはパンだけではない。もっと高度な要求をしているのだ。例えば首相は国民投票で決めるべきだということや、政府の汚職を無くせといったものだ。
ヨルダンのアブドッラー二世国王は、国民の要求を正確に理解していないのか、あるいはあえて国民の要求を聞かず、首相に責任転嫁することで、問題を先送りしているようだ。
今年に入り首相は2人も交代している。マアルーフ・バヘト首相から、最近アウン・ハサーウネ首相に替わっている。アウン・ハサーウネ氏は国際公正裁判所の、裁判官だった人物だ。
この人物が早い時期に、交代させられるようなことになれば、ヨルダン国民は明確に、非難を始めるであろう。いままでのところ、ヨルダン国民はデモのなかで、国王の退位を迫ってはいない。
それはヨルダンの国王が立派であるために、文句がないのではなく、国王に関する批判が重大な罪として、厳しい裁きを受けることになるからだ。
しかし、他の国の例を見ていると、最初は政府の政策ミスや汚職に対する批判が、最後には国王や大統領に対する非難となり、退位を求めるに到っている。
ヨルダンの場合も例外ではあるまい。そもそも、ヨルダンの国民の過半数がパレスチナ人で、ヨルダン国籍を得た人たちであり、預言者ムハンマドの末裔である国王を戴くことに、あまり意味を感じない人たちだ。
そのことに加え、ヨルダンの抗議は、ベドウインの族長たちによって始められている。ベドウインは最も国王を擁護する立場にあった人たちなのだが、今回はそうではなかった。そうであるとすれば問題の根は深いということだ。