「アサド大統領の強硬なデモ対応は当然」

2011年11月12日

 

 シリアの反体制派のデモが、もう数ヶ月にも渡って続いている。状況は悪化する一方であり、解決の糸口は全く見えていない。

 アラブ連盟が何度も討議し、最近出した結論は、シリアをアラブ連盟から追い出そうというものだった。しかし、シリア政府は全く意に介していないようだ。当然であろう。アラブ連盟から追放されるということは、実質的には何の影響も無いのだから。

 湾岸諸国からの援助は、ほとんど期待できなかったわけだし、アラブ連盟が追放したからと言って、シリアを軍事攻撃するわけでもない。かつてキャンプデービッドを締結したエジプトは、アラブ連盟から長期にわたって、追放されていた。

 シリアのバッシャール・アサド大統領に対し、アメリカ政府は亡命受け入国が幾つもあるのだから、亡命したほうがいいと呼びかけたが、これも成功していない。当然であろう。亡命したからと言って、彼に対するICC(国際刑事裁判所)の追求が、消えるわけではあるまい。

 そのことに加えて、シリア国民はバッシャール・アサド大統領が亡命した後に、彼を引渡せと受入国に言わないとは限らない。それをシリア国民が言い出すであろうと思われるほど、アサド政権は父親の代から、血塗られた独裁政治を続けてきているのだ。

 つまり、バッシャール・アサド大統領は何処までも、弾圧を加えて体制を維持するしかあるまい。生きるか死ぬかがかかっているのだ。これまでにバッシャール・アサド大統領は、幾つかの妥協案を出したが、シリア国民は拒否している。体制に対する信頼が、全く無いのだから無理もあるまい。

 シリア国民はいま、血を血で購わせようと思っているのだろう。そのことは、イラクの故サダム・フセイン大統領のように絞首刑にされるか、あるいは故カダフィ大佐のように、重症を負った後に、銃撃されて死亡するかだ。

 以前に、リビアのサイフルイスラーム氏に対し、穏健な対応をすることが、他の国内で革命運動を抱えている大統領に、辞任をさせやすい状況を作るということを書いたが、シリアの場合は既に、時間切れの感じがする。

 これから先に残されているのは、アサド体制による徹底的なデモ隊への攻撃と、大量の死傷者が出る状況か、リビアの場合のように軍事介入して、体制を力ずくで打倒するかだろう。

 いずれの場合にも、一般市民のなかから相当数の犠牲者が、出てくることが予想される。その流された血が多いほど、その後には民主的な体制が生まれると言うのだろうか。とてもそうなるとは思えないのだが。