シリアの元副大統領であるアブドルハリーム・ハダーム氏が、ついに表舞台に立って動き始めた。彼はなかなか統一できない反シリア政府の運動を、何とか一体化させようと表舞台に登場したのであろう。
彼がレバノンから武器を密輸し、シリアの反体制側に届けているのではないか、という情報があったが、それでもシリアの体制側の力による弾圧の前に、反体制派はしかるべき成果を上げることが、出来ないで今日に至っている。
アブドルハリーム・ハダーム氏はハーフェズ・アサド大統領と、現在のバッシャール・アサド大統領の下で、30年間働いてきたが、2005年にフランスに亡命している。
アブドルハリーム・ハダーム氏は4年ほど前にも、反体制派の結束を試みたが、アサド政権に近い人物として、反体制派の人たちから信頼されず、失敗に終わっている。しかし、今回は反体制派の中に、相当数の犠牲者が出ていることもあり、出来るだけ早く反体制派をまとめる必要がある、と各派が思い始めているのであろう。
シリアの反体制はサウジアラビア政府が、本腰を入れて支援してくれることを、望んでいるようだが、サウジアラビア政府はある程度の支援はするものの、明確な形での支援は避けているようだ。
それはシリアの体制が崩壊した場合の、イスラエルとアラブとの関係に影響するし、アラブの国家が不安定化しているアラブの春の動きの中で、他国にも影響が及ぶことを、懸念してではないか。
シリア国民会議のタラール・テルカーウイ氏は、サウジアラビア政府がまだシリア問題を、十分に理解してくれていない、と嘆いている。彼らにしてみれば、欧米軍の直接介入は期待できないまでも、せめてリビアと同じように、飛行禁止空域を設定して、欲しいということのようだ。
サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国からの、支援が不十分なのはアメリカの立場にも、影響を受けているのではないか。アメリカはアサド体制を嫌ってはいても、イスラエルと戦争を望まない現体制は、安心できると考えているようだ。そのため、アメリカはシリアに対し、人道支援を忘れてしまっているようだ。