「思惑が外れるか米軍の湾岸駐留」

2011年11月 8日

 以前に、アメリカ政府はイラクからスンナリ、今年末を持って撤退するのは、その兵力を湾岸諸国に、移駐するだけだからだと書いた。事実、アメリカ政府はそう考えて、クウエイト政府にも話していたのであろう。

 しかし、昨日流れた情報によれば、クウエイトのシェイク・ジャーベル・サバーハ国防相は、イラクから撤退するアメリカ軍を受け入れることを否定した。アメリカ政府の考えでは、イラクから撤退するアメリカ軍兵士のうちの、4000人をクウエイトに移駐させるというものだった。

 シェイク・ジャーベル・サバーハ国防相は『アメリカ軍を増加させる計画はない、そのことはクウエイト市とワシントン市の間で合意されている。』と語り、加えて『クウエイトは自国領土を地域のいずれの国に対する、攻撃の拠点に使わせる気もない。』と語った。

 アメリカ軍はすでにクウエイト国内に、23000人の兵士を展開しているが、これ以上増やされては困る、という意識がクウエイト政府の中には、あるということだろう。

 その裏には、最近になってアメリカとイランとの軍事緊張が、高まっていることもあろう。もし、アメリカがクウエイトの基地を使って、イランを攻撃するようなことになれば、クウエイトは自国がイランの攻撃にさらされ、火の海と化することも、考えなければなるまい。

 しかし、実際にイランとの間に緊張関係が高まり、戦争の可能性がピークに達した場合、クウエイトはアメリカ軍の駐留を、断り続けることができるだろうか。イランからしてみれば、アメリカ軍を受け入れている湾岸の、いずれの国も敵国とみなし、攻撃を加えることが考えられるからだ。

 そのイランの攻撃に対し、クウエイトも他の湾岸諸国も、十分な防衛能力を持ってはいない。したがって、危険になればアメリカ軍の、保護下に入るのが一番安全、ということになるのではないか。

 クウエイトが現段階で明かしたように、アメリカ軍の駐留兵士の増加を希望しないのであれば、イランとの間で外交活動を活発化させ、関係を良好なものにしていくことと合わせ、アメリカ軍の駐留数の削減を行うしかあるまい。

 アメリカが考えている、湾岸諸国を軍事展開のジャンピング・パッドとする計画、湾岸諸国にすべての軍事費を負担させる計画は、やはりこれから相当の苦労がいるようだ。ただ、アメリカには最後には力で押し切ることが、出来ることも確かであろう。