過去8年半のイラク駐留の中で、メリカ軍は膨大な数の軍事基地を、イラク国内に建設した。誰が考えても、アメリカ軍はこのまま、イラクに駐留し続けるだろうと思われたのだが、オバマ大統領はイラク側の意向を受けて、あっさり全面撤収を今年末までに、完了すると発表した。
いったい、何故アメリカはそうスンナリ、イラク駐留をあきらめたのであろうか。常識論者はこれについて、アメリカ経済の疲弊ぶりを、理由に挙げるだろう。しかし、真実はそこにはないと思えてならない。それで次のような事実から、自分なりの推測をしてみた。
アメリカは最近になって、イランとの緊張をあおる、発言を繰り返している。来年選挙を控えたアメリカでは、大統領候補の誰もが、イスラエル寄りの発言をし、イランの核の脅威を強調している。
そのことは、イスラエルと並んで、湾岸諸国にとっても大きな脅威となっているとアメリカは、はすりこみたいのであろう。サウジアラビアのナーイフ皇太子は最近になって、イランとの関係を改善する意思のないことを語っているが、それは多分にアメリカの意向を、受けてのことではないか。
つまり、いまアメリカと湾岸諸国は、イランの脅威を拡大させ、そのことによって、国内の反政府の動きを止め、アメリカの湾岸地域におけるプレゼンスを、拡大しようとしているのだ。イラクから撤収したアメリカ兵は、湾岸諸国に移駐するだけのことではないのか。
アメリカは湾岸諸国との間で、大型の軍の駐留計画を進めている。この中には、通常の陸軍に加え、海兵隊も加えられる。現在クウエイトには23000人のアメリカ兵が駐留しているが、これを拡大する予定だ。
カタール、アラブ首長国連邦には、空軍を増派する計画だ。このカタールはリビア革命では、アラブ首長国連邦と並んで派兵している。サウジアラビアはバハレーンの暴動(反政府デモ)に対し、自軍を派兵している。そのバハレーンはアラブフ首長国連邦と並び、アフガニスタンに派兵しているのだ。
つまり、湾岸諸国はこぞってアメリカの進める、地域の軍備強化に参加するということだ。イラクについても、クルド地区にアメリカ軍が増派される見通しだ。クルド代表はそれを否定しているが、スンニー、シーア派が中心の中央政府との間で、クルド地区が有利な境界線を設けるためには、アメリカの後押しが必要であろう。そのことをクルドの代表者は口にし始めている。
この新しい動きは何であろうかと考えると、アメリカと日本との関係が浮かんでくる。経済的に苦しくなったアメリカは、失業対策、兵器の輸出そして駐留経費の相手国負担を、実現しようと考えているのではないか。