トルコの反政府勢力であるクルド労働党(PKK)は、シリアの故ハーフェズ・アサド大統領の時代に結成されたものだ。ハーフェズ・アサド大統領がトルコに対する対応策として、結成したものであり、いわば、シリアのための組織だったのだ。
このため、クルド労働党(PKK)はシリアの国内に本部を持ち、軍事訓練所を持ち、シリア政府から武器、資金などの支援も受けていた。
そうであるとすれば、昨今のようなバッシャール・アサド政権の危機のなかでは、クルド労働党(PKK)がシリアの政権を支持し、支援するのが筋のように思える。トルコ政府はそう考えて、シリアがクルド労働党を動かして、トルコに敵対している、と言っていた。
ところが、クルド労働党(PKK)のメデイア・スポークスマンである、カラワン・アザデイ氏はシャルクルアウサト紙とのインタビューで、アサド政権支援を、全面的に否定した。
彼は支援を否定しただけではなく、インタビューのなかでバッシャール・アサド政権を「私たちはいかなる場合にも、この専制的な血の政権を擁護しないでしょう。私たちは、民間人を殺すことをやめて、抑制と暴力を放棄し、平和な方法でそれらの自由意志を表現する人々の前で、その道を開くようにシリアの政権に要求し、世界中からアサド政権に向けられている、非難に非難を加えます。」と語っているのだ。
このインタビューは反シリアの立場にある、サウジアラビアの新聞であるシャルクルアウサト紙によるものであることから、ある程度バイアスがかかっているとも考えられるが、いくらなんでも、発言の趣旨と全く異なった記事を、書くわけには行くまい。
従って、このインタビューの内容は、ほぼ正確であると理解していいだろう。それではなぜかという疑問が沸くが、それは最終的な段階で、クルド労働党の議長であるアブドッラー。オジャラン氏を、トルコ側に引き渡したのは、シリア政府だったことに、起因しているのであろう。
もう一つの可能性は、トルコ政府との妥協の時期が来つつある、とクルド労働党(PKK)は認識し始めているのかもしれない。トルコの東部で起こった地震で、は被害者のほとんどがクルド人だったが、トルコ政府はトルコ人、クルド人のわけ隔てなく、必死に救済支援活動をしていた。
そして今回、シリアで起こった革命のなかで、シリア北部に居住するクルド人は弾圧を恐れ、トルコ領内に逃げ込み難民となっている。このクルド難民に対しても、トルコ政府は手厚い保護を行っているのだ。
もし何時までも、トルコ政府との間に妥協点を探そうとしなければ、クルド労働党(PKK)はクルド人の支持を、減らしていくことになると思われるからだ。そうであって欲しいものだ。